試算表は、上から順に全部を読む必要はありません。経営者が毎月見るのは、現預金、売上、粗利、固定費と営業利益、お金の動きの5つです。この順番で見れば、5分ほどで会社の状態をつかめます。
この記事では、仮の数字の試算表を使って、5つを見る順番と、数字に違和感があるときの確かめ方を解説します。
試算表は2つの表でできている
試算表には、性質の違う2つの表が入っています。
| 表 | 何が分かるか | 主な項目 |
|---|---|---|
| 貸借対照表 | 月末時点で、会社に何がいくらあるか | 現預金、売掛金、買掛金、借入金 |
| 損益計算書 | その月(または期首から)の成績 | 売上高、売上原価、販売費及び一般管理費、営業利益 |
借方や貸方といった簿記の仕組みは、経営者が覚えなくても大丈夫です。「残高を見る表」と「成績を見る表」がある、とだけ押さえておけば、試算表は読めます。
比べる相手を決めておく
数字は、1か月分だけを見ても良し悪しが分かりません。比べる相手を決めておくと、変化に気づけます。
| 見るもの | 比べる相手 | 理由 |
|---|---|---|
| 売上、粗利、経費(損益計算書) | 前年の同じ月 | 季節による波があるため、前月と比べると判断を誤りやすい |
| 現預金、売掛金、借入金(貸借対照表) | 前月末 | この1か月で残高がどう動いたかを見るため |
期首からの累計も、あわせて見ておくと便利です。1か月だけの数字は、大きな入金や支払いで大きく動くことがあるためです。
例として使う試算表
ここからは、ある会社の7月の試算表を例にします。数字はすべて仮のものです。
損益計算書(7月の1か月分)
| 項目 | 今年7月 | 前年7月 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,000万円 | 900万円 |
| 売上原価 | 650万円 | 540万円 |
| 売上総利益(粗利) | 350万円 | 360万円 |
| 販売費及び一般管理費 | 300万円 | 290万円 |
| 営業利益 | 50万円 | 70万円 |
貸借対照表(月末の残高)
| 項目 | 7月末 | 6月末 |
|---|---|---|
| 現預金 | 1,200万円 | 1,350万円 |
| 売掛金 | 1,500万円 | 1,250万円 |
| 買掛金 | 800万円 | 710万円 |
| 借入金 | 2,000万円 | 2,040万円 |
試算表を見る5つの順番
1.現預金:前月末から増えたか、減ったか
最初に見るのは、現預金の残高です。この例では、6月末の1,350万円から7月末は1,200万円になり、150万円減っています。
ここでは、減った理由をすぐに考えなくて構いません。「150万円減った」という事実を頭に置いて次へ進み、最後の5番目で理由を説明できるかを確かめます。
2.売上:前年の同じ月と比べる
売上高は、前年7月の900万円から1,000万円に、約11%増えています。
確かめたいのは、増えた理由を自分の言葉で言えるかどうかです。新しい取引先が増えたのか、単価を上げたのか、一時的な大口の注文なのか。理由が分かっていれば、来月以降も続く増加かどうかを判断できます。
3.粗利:金額と率の両方を見る
売上が増えたのに、粗利は360万円から350万円に、10万円減っています。粗利率(粗利÷売上)で見ると、40%から35%に下がりました。
売上が伸びても、粗利が増えていなければ、会社に残るお金は増えません。仕入れ値が上がったのに販売価格に反映できていない、利益の薄い仕事が増えた、といった原因が考えられます。粗利は、金額と率の両方を見るのがポイントです。
4.固定費と営業利益:粗利の範囲に収まっているか
販売費及び一般管理費は、290万円から300万円に増えています。人件費や家賃など、売上に関係なくかかる費用が中心です。
粗利が減り、固定費が増えた結果、営業利益は70万円から50万円になりました。固定費は一度増えると簡単には下がりません。固定費を増やすときは、それを上回る粗利の見込みがあるかを考える必要があります。
5.お金の動き:利益と現預金のずれを説明する
最後に、1番目で頭に置いた「現預金が150万円減った」に戻ります。営業利益が50万円出ているのに、なぜ現預金は減ったのでしょうか。
貸借対照表の残高の動きを見ると、理由を説明できます。
| 項目 | 現預金への影響 |
|---|---|
| 営業利益 | +50万円 |
| 売掛金の増加(1,250万円→1,500万円) | −250万円 |
| 買掛金の増加(710万円→800万円) | +90万円 |
| 借入金の返済(2,040万円→2,000万円) | −40万円 |
| 合計 | −150万円 |
売上が伸びた分の代金がまだ入金されておらず、売掛金として残っています。そのため、利益は出ていても、手元のお金は減りました。この場合は、売掛金が予定どおり来月以降に入金されるか、回収が遅れている取引先がないかを確かめます。
なお、この表は考え方を示すために簡略化しています。実際の試算表では、税金の支払い、減価償却費、在庫の増減なども、利益と現預金のずれの原因になります。
毎月5分で使える確認表
試算表が届いたら、次の5行を上から順に確認してみてください。
| 順番 | 見る場所 | 比べる相手 | 確かめる問い |
|---|---|---|---|
| 1 | 現預金 | 前月末 | いくら増えたか、減ったか |
| 2 | 売上高 | 前年同月 | 増減の理由を説明できるか |
| 3 | 粗利(金額と率) | 前年同月 | 売上の増減と同じ方向に動いているか |
| 4 | 固定費と営業利益 | 前年同月 | 固定費の増加が、粗利の増加に見合っているか |
| 5 | 売掛金・買掛金・借入金 | 前月末 | 1番目の現預金の増減を説明できるか |
5番目まで来て、現預金の増減を説明できない場合は、その月のどこかに確認すべき動きがあります。
数字に違和感があるときに確かめること
試算表の数字そのものが誤っている場合もあります。次の点は、経営者でも確かめられます。
- 試算表の現預金と、通帳やネットバンキングの残高が合っているか
- 家賃やリース料のように毎月かかるはずの費用が、月によって抜けていないか
- 仮払金や立替金のような一時的な項目が、何か月も残り続けていないか
- 売掛金の中に、長く入金されていない取引先がないか
違和感があれば、経理の担当者や税理士にそのまま聞いてみてください。誤りは、月次のうちに見つけるほど直しやすくなります。
試算表が届くのが遅いと、見方以前の問題になる
見方が分かっても、試算表が届くのが2か月後では、気づいたことを次の判断に活かしにくくなります。たとえば、粗利率が下がっていることに9月の終わりに気づいても、7月から何か月分も同じ状態が続いていたことになるからです。
毎月の数字を早く確認する意味は、月次決算とは?試算表を毎月確認する重要性で解説しています。年1回の決算書で見るべき数字は、経営者が本当に見るべき決算書のポイントにまとめています。
当事務所の場合
奈須大貴公認会計士・税理士事務所では、公認会計士・税理士の奈須大貴が直接対応します。月次決算を通じて毎月の試算表を作り、売上や利益が計画どおりか、現預金や資金繰りに問題がないかを、経営者と一緒に確認します。
年間の利益と納税額は、第2四半期頃から見通しを立て、第3四半期で精度を高めながら決算に備えます。「試算表は届くが、どこを見ればよいか分からない」という段階からでも、数字の読み方を一緒に確かめていけます。
一方で、「決算と申告だけを、できるだけ安く依頼したい」という場合には、当事務所は合わない可能性があります。顧問契約での支援内容は、税務顧問サービスのページでご案内しています。
よくあるご質問
試算表と決算書は、何が違うのですか?
決算書は、事業年度の終わりに決算の手続きを行って確定させる、1年間の成績と財産の状態をまとめたものです。試算表は、その途中経過を月ごとなどに確認するためのものです。
試算表を毎月見ていれば、決算書を受け取る前に、1年の成績の見通しを持てます。
試算表は毎月作ってもらうものですか?
作る頻度は、会社の経理の進め方や税理士との契約によって異なります。数字を経営の判断に使いたい場合は、毎月作り、翌月のできるだけ早い時期に確認できる体制をおすすめします。
毎月の数字を、経営の判断に使いたい方へ
試算表は、決算や申告のためだけの書類ではありません。現預金、売上、粗利、固定費と営業利益、お金の動きの順に毎月確かめれば、会社の変化に早く気づけます。
「試算表は届いているが、読み方に自信がない」「数字が届くのが遅く、判断に間に合わない」という方は、現在の状況をお聞かせください。福岡市南区大橋を拠点に、福岡市全域に対応しており、オンラインでのご相談も可能です。


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