粗利(売上総利益)と営業利益の違いは、販売費及び一般管理費(以下、販管費)を引く前か、引いた後かです。粗利は売上高から売上原価を引いた利益で、商品やサービスそのものでどれだけ稼げているかを表します。営業利益は、粗利からさらに人件費や家賃などの販管費を引いた利益で、会社を動かす費用まで払った後に本業で残る利益を表します。
この記事では、公認会計士・税理士の奈須大貴が、粗利と営業利益を並べて見ると何が分かるのかを解説します。営業利益が減ったときに、その原因を3つに分けて確かめる計算例も紹介します。
粗利と営業利益は、引いている費用が違う
損益計算書では、売上高から順に費用を引いていき、段階ごとに利益が示されます。粗利と営業利益の違いは、次のように整理できます。
| 項目 | 粗利(売上総利益) | 営業利益 |
|---|---|---|
| 計算のしかた | 売上高 − 売上原価 | 粗利 − 販管費 |
| 引いている主な費用 | 仕入、材料費、外注費など、売上をつくるために直接かかった費用 | 粗利で引いた費用に加え、人件費、家賃、広告宣伝費、減価償却費など |
| 表していること | 商品やサービスで稼ぐ力 | 本業全体で稼ぐ力 |
| 主に影響するもの | 販売価格、仕入価格、値引き、商品の組み合わせ | 粗利に加えて、人の数、事務所や店舗の数、広告の量 |
粗利と「利益」の違いを知りたい場合も、考え方は同じです。単に「利益」というときは、文脈によって営業利益、経常利益、当期純利益のどれかを指していることがほとんどです。損益計算書の利益は、次の順番で計算されます。
| 利益 | 計算のしかた |
|---|---|
| 粗利(売上総利益) | 売上高 − 売上原価 |
| 営業利益 | 粗利 − 販管費 |
| 経常利益 | 営業利益 + 営業外収益 − 営業外費用(受取利息や支払利息など) |
| 税引前当期純利益 | 経常利益 + 特別利益 − 特別損失 |
| 当期純利益 | 税引前当期純利益 − 法人税等 |
経営の判断で特に大切なのは、上の2段です。粗利が足りないのか、粗利はあるのに販管費が重いのかで、打つ手がまったく違うからです。
粗利と営業利益を並べると、問題の場所が分かる
粗利だけ、営業利益だけを見ても、利益が増えた理由や減った理由は分かりません。前年の同じ時期と比べて、2つがそれぞれ増えたか減ったかを並べると、どこに目を向けるべきかが見えてきます。
| 粗利 | 営業利益 | 考えられる状態 | まず確かめること |
|---|---|---|---|
| 増えた | 増えた | 稼ぐ力が上がり、販管費も粗利の範囲に収まっている | 増えた理由が一時的な取引でないか |
| 増えた | 減った | 粗利の増加以上に販管費が増えている | 人件費、広告費、家賃など、増えた販管費の中身 |
| 減った | 減った | 売上の減少か、値引きや仕入価格の上昇で稼ぐ力が落ちている | 売上の増減と粗利率の変化 |
| 減った | 増えた | 販管費を減らして利益を保っている | 削った費用が、将来の売上に必要なものでなかったか |
この表で見落とされやすいのが、2段目の「粗利は増えたのに営業利益が減った」状態です。売上が伸びていると安心しやすいのですが、採用や出店、広告を先に増やしていると、この形になります。
営業利益が減った原因を、3つに分けて確かめる
粗利と営業利益の考え方を使うと、営業利益の増減を「売上の増減」「粗利率の変化」「販管費の増減」の3つに分けられます。ここでは仮の数字で、ある会社の前年と今年を比べてみます。
| 項目 | 前年 | 今年 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 8,000万円 | 9,000万円 | +1,000万円 |
| 売上原価 | 5,200万円 | 6,120万円 | +920万円 |
| 粗利 | 2,800万円 | 2,880万円 | +80万円 |
| 粗利率 | 35% | 32% | −3ポイント |
| 販管費 | 2,400万円 | 2,640万円 | +240万円 |
| 営業利益 | 400万円 | 240万円 | −160万円 |
売上は1,000万円増えたのに、営業利益は160万円減っています。この160万円の減少を、3つの原因に分けると次のようになります。
| 原因 | 計算 | 営業利益への影響 |
|---|---|---|
| 売上が増えた | 増えた売上1,000万円 × 前年の粗利率35% | +350万円 |
| 粗利率が下がった | 今年の売上9,000万円 × 粗利率の低下3ポイント | −270万円 |
| 販管費が増えた | 2,640万円 − 2,400万円 | −240万円 |
| 合計 | 350万円 − 270万円 − 240万円 | −160万円 |
分けてみると、売上の増加で350万円の利益が増えるはずだったところを、粗利率の低下と販管費の増加がそれぞれ同じくらい打ち消していたことが分かります。
この会社が次に確かめるべきことは2つです。1つは、粗利率が3ポイント下がった理由で、値引きを増やした、仕入価格が上がったのに販売価格に反映していない、粗利率の低い商品の売上が伸びた、などが考えられます。もう1つは、販管費の240万円の増加が、来期以降の売上につながる費用かどうかです。
毎月の試算表で、粗利と営業利益を見るときのポイント
この分け方は、年に1回の決算書だけでなく、毎月の試算表でも使えます。月ごとに見るときは、次の点に気をつけると判断を誤りにくくなります。
| ポイント | 理由 |
|---|---|
| 前年の同じ月と比べる | 季節によって売上や費用が変わるため、前月と比べるだけでは増減の理由を取り違えやすい |
| 粗利は金額と率の両方を見る | 金額が増えていても、率が下がっていれば値引きや仕入価格の変化が起きている可能性がある |
| 人件費がどこに入っているかを知っておく | 現場の人件費を売上原価に入れるか販管費に入れるかで、粗利の大きさが変わる |
| 年に1回の費用を月ごとにならしておく | 賞与や年払いの保険料などをその月にまとめて入れると、その月の営業利益だけが大きく下がって見える |
特に3つ目は、同業の会社と粗利率を比べるときに注意が必要です。同じ業種でも、人件費を売上原価に入れる会社と販管費に入れる会社では、粗利率に大きな差が出ます。比べるなら、自社の過去の数字と比べるほうが確かです。人件費の計上先で粗利率がどれほど変わるかと、自社の試算表での確かめ方は、粗利に人件費は含まれる?計上先で変わる粗利率と、試算表での確かめ方で解説しています。
毎月の試算表をどの順番で確かめるかは、試算表の見方|経営者が毎月5分で確認する5つの順番で詳しく解説しています。
当事務所の場合
奈須大貴公認会計士・税理士事務所では、公認会計士・税理士の奈須大貴が直接対応します。顧問契約では月次決算を行い、毎月の試算表をもとに、売上、粗利と粗利率、固定費、営業利益が前年や計画と比べてどう動いたかを、経営者と一緒に確認しています。
この記事で紹介した3つへの分け方も、利益が増えた月や減った月に、その理由を確かめるために使っています。年間の利益と納税額は第2四半期頃から見通しを立て、第3四半期で精度を高めて決算に備えます。
一方で、「決算と申告だけを、できるだけ安く依頼したい」という場合には、当事務所は合わない可能性があります。顧問契約での支援内容は、税務顧問サービスのページでご案内しています。
売上は伸びているのに利益が増えない方へ
粗利と営業利益の違いは、販管費を引く前か後かです。2つを並べ、営業利益の増減を「売上」「粗利率」「販管費」の3つに分けると、値付けや仕入を見直すべきか、固定費を見直すべきかが分かります。まずは、前年と今年の決算書で、上の計算をしてみてください。
「売上は増えたのに、なぜ利益が減ったのか分からない」「毎月の数字で、利益が減った原因を確かめたい」という方は、直近の試算表や決算書をもとに状況をお聞かせください。今の税理士に伝える前の段階でも相談でき、相談しただけで今の顧問契約を終える必要はありません。福岡市南区大橋を拠点に、福岡市と春日市・大野城市・那珂川市・太宰府市・筑紫野市などの近郊に対応しており、オンラインでの面談も可能です。

