資金繰り表の作り方|通帳から作る5つの手順と、3か月先の資金不足を見つける読み方

資金繰り表は、月ごとに「月初の残高+入金−支払い=月末の残高」を並べて、この先お金が足りなくなる月がないかを確かめる表です。作り方は、表の枠を作り、通帳から過去の実績を写し、入金と支払いの予定を入れ、月末の残高を見る、という順番で進めます。

この記事では、公認会計士・税理士の奈須大貴が、資金繰り表を作る5つの手順と、仮の数字の表を使った読み方を解説します。日本政策金融公庫が公開している無料のテンプレートの使い方も紹介します。

資金繰り表で分かること

決算書や試算表で分かるのは、利益が出ているかどうかです。一方で、売上を計上してから入金されるまでには時間がかかり、借入金の返済や納税のように、利益とは関係なく出ていくお金もあります。そのため、利益が出ていても、手元のお金が足りなくなることがあります。

資金繰り表は、利益ではなく、実際にお金が入る月と出る月で数字を並べます。何か月か先まで並べておけば、足りなくなる月を前もって見つけ、入金を早める、支払いの時期を相談する、融資を申し込むといった手を、間に合ううちに打てます。

資金繰り表の基本の形

資金繰り表は、横に月、縦に項目を並べます。項目は、次の6つの段に分けると読みやすくなります。

段入れるもの
月初の残高前月末の現金と預金の合計
入金売上代金の入金(現金売上と売掛金の回収)、その他の入金
支払い仕入や外注費の支払い、人件費、家賃などの経費、税金や社会保険料
経常収支入金 − 支払い
財務収支借入れによる入金 − 借入金の返済
月末の残高月初の残高 + 経常収支 + 財務収支

「経常収支」は、本業でお金が増えたか減ったかを表します。借入れと返済を別の段に分けておくと、本業で稼いだお金で返済できているのか、借入れで支払いを補っているのかが見分けられます。

資金繰り表の作り方:5つの手順

手順1:表の枠を作る

エクセルやスプレッドシートで、横に月、縦に上の6つの段を並べます。最初は、過去3か月と、この先3か月の合計6か月分の列を用意すれば十分です。

支払いの項目は、会社の支払いに合わせて分けます。細かく分けすぎると続かないため、仕入・外注、人件費、その他の経費、税金・社会保険料くらいから始めてください。

手順2:過去3か月の実績を通帳から写す

事業で使っている口座の通帳やネットバンキングの明細を見ながら、過去3か月の入金と支払いを項目ごとに集計します。現金で支払っているものがあれば、それも加えます。

写し終えたら、各月の月末の残高が、通帳の残高の合計と一致するかを確かめます。一致しなければ、写し漏れか、項目の入れ違いがあります。実績が合っていないと、この先の予定も正しく見通せないため、ここはきちんと合わせます。

手順3:入金の予定を入れる

この先3か月の入金の予定を入れます。ポイントは、売上を計上する月ではなく、実際にお金が入る月に入れることです。たとえば月末締め・翌々月末入金の取引先なら、4月の売上は6月の入金の欄に入れます。

売上の見込みは、受注している仕事や過去の同じ時期の実績をもとに、確実に見込めるものから入れます。期待を込めた数字にすると、資金繰り表が「足りる」と言ってしまうため、少し控えめに見積もるのが安全です。

手順4:支払いの予定を入れる

支払いは、毎月ほぼ同じ額のものと、年に何回かだけ出ていくものに分けて入れます。

種類例入れ方
毎月ほぼ同じ給与、家賃、リース料、借入金の返済前月の実績をそのまま入れる
売上に連れて動く仕入、外注費支払条件に合わせ、支払う月に入れる
年に何回か賞与、法人税・消費税の納付、中間納付、保険料の年払い支払う月を調べて、その月に入れる

資金繰り表で見落としやすいのが、年に何回かの支払いです。法人税と消費税は、原則として事業年度が終わった日の翌日から2か月以内に納めます。賞与の月と納税の月が近い会社では、その時期にまとまったお金が出ていきます。

手順5:月末の残高を見て、足りなくなる月を探す

入金と支払いの予定を入れたら、月末の残高を計算します。エクセルなら、月末の残高の欄に「=月初の残高+経常収支+財務収支」の式を入れ、翌月の月初の残高の欄には前月の月末の残高を参照する式を入れておくと、数字を変えたときに先の月まで自動で計算されます。

そのうえで、月末の残高が、支払いに必要な額を下回る月がないかを確かめます。

仮の数字で、資金繰り表を読んでみる

ある会社の、4月から6月までの資金繰り表です。3月決算で、5月に法人税と消費税を納め、6月に賞与を支給するとします。数字はすべて仮のものです。

項目4月5月6月
月初の残高800万円780万円520万円
売上代金の入金1,000万円1,050万円980万円
仕入・外注の支払い550万円580万円560万円
人件費(給与・賞与)250万円250万円550万円
その他の経費120万円120万円120万円
税金0万円260万円0万円
経常収支+80万円−160万円−250万円
借入金の返済−100万円−100万円−100万円
月末の残高780万円520万円170万円

4月は本業で80万円増えていますが、5月は納税、6月は賞与で、経常収支がマイナスになります。6月末の残高は170万円で、毎月の支払いが1,000万円前後ある会社としては、7月の初めの支払いに足りなくなるおそれがあります。

この資金繰り表を3月の時点で作っていれば、3か月前に気づけます。売上代金の入金を早めてもらえる取引先がないか、仕入の支払い時期を相談できないか、融資を申し込むならいつまでに金融機関へ相談するか、といったことを、時間に余裕をもって考えられます。

日本政策金融公庫のテンプレートを使う

一から表を作るのが難しい場合は、日本政策金融公庫が公開している書式を使う方法があります。各種書式ダウンロード|中小企業事業|日本政策金融公庫のページから、資金繰り表などの書式をダウンロードできます。

テンプレートを使う場合も、作り方は上の5つの手順と同じです。項目が自社の支払いに合わないときは、使わない行を空けておき、足りない項目は「その他」の行に入れて、メモで中身を残しておきます。

資金繰り表を作るときによくある間違い

間違い起きること直し方
売上を、計上する月に入れる入金より早くお金が入る前提になり、足りなくなる月を見落とす取引先ごとの締め日と入金日から、入金の月に入れる
消費税や中間納付を入れ忘れる納付の月に、予定外のお金が出ていく申告書や前年の納付書で、納付の月と額を確かめる
借入金の返済を入れ忘れる返済は費用ではないため、試算表だけを見ていると気づきにくい返済予定表を見て、毎月の返済額を財務収支に入れる
実績で見直さない予定と実際のずれが積み重なり、表が当てにならなくなる毎月、終わった月を実績に置き換える

毎月の更新:1か月終わったら、1か月足す

資金繰り表は、一度作って終わりではありません。1か月が終わるたびに、その月の予定を実績に置き換え、表の右端に新しい月を1か月足します。こうすると、いつでも3か月先までが見える状態を保てます。

予定と実績が大きくずれた月は、その理由を確かめます。入金が遅れている取引先がある、予定外の支払いがあった、といった理由が分かれば、次の月からの予定の精度が上がります。

業種によっては、資金繰り表に独自の工夫が要ります。たとえば建設業では、工事ごとに入金と支払いの時期が大きく違うため、建設業の資金繰りはなぜ苦しい?入金条件で変わる運転資金と、月別の資金繰り表の作り方で、工事ごとの予定を会社全体の資金繰り表にまとめる方法を解説しています。業績が良い会社にも資金繰り表が必要な理由は、資金繰り表は必要?業績が良い会社ほど作っておきたい理由で紹介しています。

当事務所の場合

奈須大貴公認会計士・税理士事務所では、公認会計士・税理士の奈須大貴が直接対応します。月次決算で作る毎月の試算表と、資金繰り表をあわせて見ながら、この先お金が足りなくなる月がないかを、経営者と一緒に確かめます。助言だけでなく、資金繰り表の作成そのものも、会社と一緒に手を動かして行います。

融資を考える場合は、資金繰り表など、金融機関に説明するための資料づくりも支援します。顧問契約での支援内容は、税務顧問サービスのページでご案内しています。

よくあるご質問

資金繰り表は、何か月先まで作ればよいですか?

まずは3か月先までで十分です。3か月先まで見えていれば、足りなくなる月に気づいてから、入金や支払いの相談、融資の申し込みといった手を打つ時間があります。慣れてきたら、決算や納税、賞与の時期まで含めて、6か月から1年先まで延ばしていきます。

資金繰り表とキャッシュフロー計算書は、何が違いますか?

キャッシュフロー計算書は、終わった期間のお金の動きを、営業・投資・財務の3つに分けてまとめた書類です。資金繰り表は、これから先の月ごとの入金と支払いを見通して、足りなくなる月を見つけるための表です。過去を振り返るのがキャッシュフロー計算書、先を見通すのが資金繰り表と考えると分かりやすいです。

資金繰り表を作ってみたい方へ

資金繰り表は、通帳から過去3か月を写し、この先3か月の入金と支払いを入れるところから始められます。月末の残高が足りなくなる月が見つかれば、その月までに打てる手を考えられます。

「作ってみたが、この数字で合っているか分からない」「納税や賞与の月に、お金が足りるか不安がある」という方は、直近の試算表と通帳をもとに、一緒に資金繰り表を確かめます。福岡市南区大橋を拠点に、福岡市全域に対応しており、オンラインでのご相談も可能です。

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コメント

“資金繰り表の作り方|通帳から作る5つの手順と、3か月先の資金不足を見つける読み方” への2件のフィードバック

  1. […] なかでも3つ目の、資金繰り表に入れておくことが要になります。資金繰り表があれば、11月のように賞与と重なる月にお金が足りるかを、半年前から確かめられます。足りない見込みなら、早めに金融機関に相談することもできます。資金繰り表の作り方は、資金繰り表を作って、お金の不安から解放されようで紹介しています。 […]

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