開業届をe-Taxで出すときの届出の選び方|令和9年1月からまとめて提出できるようになります

開業届をe-Taxで出すときは、「青色申告にするか」「家族に給与を払うか」「人を雇うか」の3つを先に決めると、一緒に出す届出が決まります。国税庁は令和8年10月20日、令和9年1月から、開業届や青色申告承認申請など開業に関する5つの届出を、e-Taxでまとめて、または必要なものだけ選んで出せるようにする予定だと公表しました。

この記事では、公認会計士・税理士の奈須大貴が、令和9年1月からの変更点と、どの届出を出すかの決め方、送信の前に決めておくことを解説します。

令和9年1月からe-Taxで何が変わるか

国税庁のe-Taxのお知らせ「令和9年1月からe-Taxが一層便利になります」によると、令和5年度税制改正で設けられた、開業に関する届出をまとめて出せる様式(統合様式)を、e-Taxで使えるようにする予定です。対象は個人事業者の開業の手続きで、まとめて出せるのは次の5つです。

  • 開業の届出(個人事業の開業・廃業等届出書)
  • 所得税の青色申告承認申請
  • 青色事業専従者給与に関する届出(変更届出)
  • 給与支払事務所等の開設の届出
  • 源泉所得税の納期の特例の承認申請

今は、国税庁の「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」にあるとおり、パソコンのe-Taxソフトで届出書を作って提出する形です。青色申告承認申請書などの届出も、それぞれ作って出す必要があります。

項目今令和9年1月から(予定)
作り方届出ごとに作る5つの届出を1回の入力でまとめて作れる
出し方届出ごとに送るまとめて、または必要なものだけ選んで送れる
届出の中身と期限届出ごとに決まっているお知らせでは、変わるとは書かれていない

お知らせに載っている画面のイメージは検討中の内容を含み、今後変わる可能性があるとされています。実際に使うときは、e-Taxのホームページで最新の案内を確かめてください。

まとめて出せるようになっても、どれを出すかは自分で決める

この変更で楽になるのは、届出を作って送る手間です。5つのうちどれを出すかは、これまでどおり、開業する人が自分の事業に合わせて決めます。

開業の解説では、5つの届出が「一緒に出しておくとよい書類」として並べられていることがよくあります。しかし、家族に給与を払わない人が青色事業専従者給与の届出を出しても意味はありません。逆に、出しておくべき届出を出さないと、その年の経費や控除に影響します。送信の前に、次の順で考えると迷いません。

送信の前に決めること
届出必要になる人出さないとどうなるか決めるときのポイント
開業届事業を始めた人の全員屋号の口座を作るときなどに控えを求められて困ることがある開業日と事業の内容を決めておく
青色申告承認申請書青色申告にしたい人その年は白色申告になり、青色申告特別控除などが使えない毎日の取引を帳簿につける体制まで含めて決める
青色事業専従者給与に関する届出書生計を一にする家族に給与を払い、経費にしたい人家族への給与を経費にできない仕事の内容と、それに見合う金額を決める
給与支払事務所等の開設届出書家族(専従者)や従業員に給与を払う人給与を払い始めたことが税務署に伝わらない(期限は開設から1か月以内)開業届に記載すれば不要になる場合がある
源泉所得税の納期の特例の承認申請書給与を払う人が常時10人未満で、納付を年2回にまとめたい人源泉税を毎月、翌月10日までに納めることになる年2回にまとめた分のお金を残せるかで決める

各届出の提出期限は、国税庁のタックスアンサー「No.2090 新たに事業を始めたときの届出など」にまとめられています。福岡国税局の「個人事業の開業に係る提出書類一覧」では、給与支払事務所等の開設届出書は、開業届に記載した場合は不要と案内されています。

送信の前に決めておく3つのこと

1. 青色申告にするか

青色申告の承認申請は、出すだけなら1枚の届出です。ただ、青色申告にすると、日々の取引を帳簿につけ、決算書を作ることが前提になります。届出を出すかどうかは、開業した月から帳簿をつける体制を作れるかどうかとセットで決めてください。

体制の作り方は難しくありません。事業用の口座とカードを1つずつ決め、会計ソフトに毎月の取引を取り込む流れを、開業した月から始めることです。青色申告の特典と、控除額ごとに必要な帳簿は青色申告のメリットとは?白色申告との違いと、青色にした年から毎月やることで解説しています。

2. 家族に給与を払うか

家族に給与を払って経費にするには、届出書に、家族の名前、仕事の内容、給与の金額、支払う時期を書きます。国税庁のタックスアンサー「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」によると、経費にできるのは、届出書に書いた方法と金額の範囲で支払い、労務の対価として相当と認められる金額です。

ここで多いのが、届け出た金額と実際に払う金額がずれることです。仮の数字で見てみます。

項目金額
届出書に書いた給与月10万円
実際に払った給与月12万円
1年間に払った給与12万円×12か月=144万円
届出書の範囲で経費になる額10万円×12か月=120万円
届出書の範囲を超えた額144万円-120万円=24万円

給与を上げるときは、払う前に変更届出書を出します。金額は「いくら払いたいか」ではなく、家族が受け持つ仕事の中身と時間に見合うかで決めてください。また、青色事業専従者として給与を受け取る家族は、配偶者控除や扶養控除の対象にはなりません。家族の側の税金と社会保険も含めて決めることが大切です。

3. 人を雇うか、源泉税を年2回にまとめるか

家族や従業員に給与を払うと、給与から源泉税を差し引いて納める必要があります。納める期限は原則として、給与を払った月の翌月10日です。国税庁のタックスアンサー「No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例」によると、給与を払う人が常時10人未満なら、承認を受けて、1月から6月の分を7月10日まで、7月から12月の分を翌年1月20日までにまとめて納められます。

納める回数が毎月から年2回に減るので、事務の手間は軽くなります。その代わり、6か月分をまとめて払うお金を残しておく必要があります。仮の数字で見てみます。

項目金額
毎月の給与から差し引く源泉税(家族1人と従業員2人の合計)1万5,000円
1月から6月の分(7月10日までに納める)1万5,000円×6か月=9万円
7月から12月の分(翌年1月20日までに納める)1万5,000円×6か月=9万円

差し引いた源泉税は、預かっているお金です。事業の運転資金と同じ口座に置いたままだと、7月に「思ったより手元にお金がない」ということが起きやすくなります。開業2年目は、前の年の所得をもとにした住民税や個人事業税の通知が届く時期とも近くなります。毎月、差し引いた源泉税の額を帳簿で確かめ、納める月に向けてお金を分けておくと安心です。

なお、納期の特例は、申請書を出した月の翌月に差し引く源泉税から対象になります。最初の給与を払う前に出しておくのが実務的です。

令和9年1月まで待ってから出したほうがよいか

待つ必要はありません。e-Taxでまとめて出せるのは便利ですが、届出には期限があり、待っている間に期限を過ぎると、その年の扱いが変わってしまうからです。

特に気をつけたいのが、青色申告承認申請書です。1月16日以後に開業した場合、期限は開業した日から2か月以内です。仮に令和8年11月10日に開業した場合、期限は令和9年1月10日になります。新しい機能が使えるようになるのを待っているうちにこの日を過ぎると、令和8年分は白色申告になります。

開業した日青色申告承認申請書の期限待っていると起きること
令和8年11月10日令和9年1月10日新しい機能の提供時期によっては期限に間に合わず、令和8年分が白色申告になる
令和8年12月20日令和9年2月20日期限は令和9年に入るが、提供の日付は示されておらず、間に合うかは分からない

今の時点で開業する人は、今あるe-Taxソフトや書面で、届出ごとに出してください。1月16日以後に開業した場合は、家族への給与の届出も、開業した日から2か月以内が期限です。

届出を出した後、1年目に整えておくこと

届出は、開業した直後の1回で終わります。一方で、届出で選んだことは、その後1年間の帳簿のつけ方とお金の流れに効いてきます。1年目のうちに、次の3つを整えておくと、初めての確定申告で慌てずに済みます。

  • 事業用の口座とカードを分け、取引を会計ソフトに毎月取り込む
  • 家族や従業員の給与と、差し引いた源泉税を、毎月帳簿で確かめる
  • 開業から数か月たった時点で、売上と経費を集計し、その年の所得のおおよそを見ておく

確定申告を税理士に依頼する場合の段取りと渡すものは、確定申告を税理士に依頼するなら、いつまでに何を渡す?で解説しています。

よくあるご質問

法人を設立する場合も、この変更の対象ですか?

国税庁のお知らせは、個人事業者の開業に関する手続きについての案内です。法人を設立するときの届出がまとめて出せるようになるとは書かれていません。

e-Taxで届出を出すには、何が必要ですか?

国税庁の「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」では、e-Taxを初めて使う人は利用者識別番号を取得する必要があると案内されています。必要な準備は、e-Taxのホームページで確かめてください。

当事務所の場合

奈須大貴公認会計士・税理士事務所では、公認会計士・税理士の奈須大貴が直接対応し、個人で開業する方のご相談をお受けしています。開業時に、青色申告にするか、家族への給与をいくらにするか、源泉税を年2回にまとめるかといった届出の選び方から、1年目の記帳と確定申告まで、事業の内容とお金の流れをお聞きしたうえで一緒に決めます。

開業した後も、毎月の数字を確認する顧問の形にすると、年の途中でその年の所得と税金の見通しが分かります。2年目に届く税金への備えや、いずれ法人にするかどうかの判断も、数字をもとに考えられるようになります。顧問契約での支援内容は、税務顧問サービスのページでご案内しています。一方で、「申告だけを、できるだけ安く依頼したい」という場合には、当事務所は合わない可能性があります。

これから開業する方へ

令和9年1月から、開業に関する5つの届出をe-Taxでまとめて出せるようになる予定です。ただ、どれを出すかを決めるのは、これまでどおり開業する人です。送信の前に、青色申告にするか、家族に給与を払うか、人を雇うかの3つを決めておいてください。

「家族に手伝ってもらう予定だが、給与をいくらにすればよいか分からない」「開業してから1年目の記帳と申告をどう進めればよいか相談したい」という方は、開業の時期と事業の内容をお聞きしたうえで、出す届出と1年目の進め方を一緒に整理します。福岡市南区大橋を拠点に、福岡市全域と近郊の方のご相談をお受けしており、オンラインでの面談にも対応しています。来所でのご相談は完全予約制です。


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