確定申告を税理士に依頼するなら、遅くとも1月中には相談を済ませ、売上・経費・控除の資料を1月中に渡すのが目安です。所得税の確定申告の期限は原則3月15日ですが、税理士の側では資料を受け取ってから帳簿を整え、不明な点を確かめ、申告書の内容を依頼者と確認するまでに日数がかかります。年内に相談しておけば、渡す資料の準備も含めて余裕を持って進められます。
この記事では、公認会計士・税理士の奈須大貴が、個人事業主が確定申告を税理士に依頼するときの日程と、税理士に渡すものの一覧、依頼の前に決めておくこと、翌年の申告を楽にする準備を解説します。
依頼は「3月15日」から逆算して決める
所得税の確定申告は、原則として翌年の2月16日から3月15日までに行います。個人事業主で消費税の申告が必要な場合は、消費税の申告と納付の期限が3月31日です。期限が土日祝日にあたる場合は、翌日以降の平日にずれます。
一般的な解説では、依頼の流れとして「見積もりを取る」「資料を渡す」「申告書を確認する」「提出する」が挙げられます。どれも欠かせない手順ですが、実際に間に合うかどうかを決めるのは、それぞれの手順に何日かかるかです。依頼から提出までの日程を仮に組むと、次のようになります。

| 時期 | 依頼者がすること | 税理士がすること |
|---|---|---|
| 12月 | 事業の内容、売上の規模、記帳の状態を伝えて相談する | 依頼の範囲と、渡してもらう資料を案内する |
| 1月 | 資料を集めて渡す(年明けに届く書類を含む) | 資料を受け取り、帳簿の入力や確認を始める |
| 2月 | 税理士からの質問に答える | 不明な入出金、家事按分、固定資産の扱いを確かめる |
| 3月上旬 | 所得と税額、納付の方法を確かめる | 申告書を作り、内容を説明する |
| 3月15日まで | 納付の準備をする | 電子申告で提出する |
この日程で大きく遅れやすいのは、1月の資料集めと2月の質問への回答です。資料が2月の後半にずれ込むと、税理士の確認の時間が短くなり、質問への回答も急ぎになります。2月から3月は、税理士事務所にとっても一年で最も忙しい時期です。新しい依頼の受付を早めに締める事務所もあるため、初めて依頼する場合は、年内か1月の早い時期に相談しておくと安心です。
税理士に渡すものの一覧
確定申告で税理士に渡すものは、大きく分けて「事業の売上と経費が分かるもの」「所得から差し引く控除が分かるもの」「本人と過去の申告が分かるもの」の3つです。
| 区分 | 渡すもの | 何に使うか |
|---|---|---|
| 売上 | 発行した請求書の控え、売上の入金がある通帳の明細、取引先からの支払明細 | 1年間の売上を確かめ、年をまたいだ取引を分ける |
| 売上 | 報酬から源泉徴収された所得税が分かる支払明細や支払調書 | 前払いした所得税として、申告で差し引く |
| 経費 | 領収書・レシート、クレジットカードの利用明細、経費の引き落としがある通帳の明細 | 経費の金額と内容を確かめる |
| 経費 | 仕入先・外注先からの請求書 | 仕入や外注費を確かめる |
| 固定資産 | 車・パソコン・設備などを買ったときの契約書や請求書、ローンやリースの契約書 | 減価償却の計算に使う |
| 家事按分 | 自宅の賃貸借契約書、家賃・電気代・通信費などの明細、事業に使う面積や時間の分かるメモ | 家庭と事業で共用している費用を分ける |
| 控除 | 国民年金・国民健康保険の支払額が分かるもの、生命保険料・地震保険料の控除証明書、小規模企業共済やiDeCoの掛金の証明書 | 所得から差し引く控除を計算する |
| 控除 | 医療費の明細、ふるさと納税の受領証明書、扶養する家族の情報 | 該当する場合に控除を計算する |
| 本人・過去の申告 | 前年の確定申告書と決算書の控え、青色申告承認申請書や開業届の控え、マイナンバーが分かるもの | 前年からの繰越や、青色申告の扱いを確かめる |
| その他 | 給与や年金がある場合の源泉徴収票、予定納税の通知 | ほかの所得と、前払いした税金を確かめる |
不動産や株式など、事業以外の収入がある場合や、控除の種類ごとの書類は、令和7年分所得税の確定申告 事前準備チェックリストでも確かめられます。
すべてが手元にそろっていなくても、相談は始められます。たとえば、領収書が一部欠けていても、通帳やカードの明細から支払いを確かめられることがあります。分からない書類があれば、まず手元にあるものを渡し、足りないものを税理士と一緒に確かめていけば足ります。
年明けに届く書類は、届いた順に渡す
控除の証明書や取引先からの支払調書は、年末から年明けにかけて届くものが多くあります。全部そろうのを待ってから渡すと、作業の開始が遅れます。売上と経費の資料を先に渡し、年明けに届く書類は届いた順に追加で渡すと、税理士の側で入力と確認を先に進められます。
依頼の前に決めておくこと
税理士に依頼する前に、どこまでを任せるかを決めておくと、日程も費用も見通しやすくなります。
| 決めておくこと | 主な選択肢 | 考え方 |
|---|---|---|
| 記帳をどちらが行うか | 自分で会計ソフトに入力する/資料を渡して税理士に任せる | 取引が多いほど、任せる場合の作業量と費用が大きくなる |
| 申告の種類 | 青色申告/白色申告 | 青色申告の承認を受けているかを確かめる。受けていなければ翌年からの切り替えも検討する |
| 消費税の申告 | 必要/不要 | 2年前の売上が1,000万円を超えている場合や、インボイスの登録をしている場合は申告が必要 |
| 依頼の形 | 確定申告だけのスポット/毎月の記帳と相談を含む顧問 | 年の途中で相談したいことがあるか、翌年も同じ依頼を続けるかで選ぶ |
| 資料の渡し方 | 紙で郵送・持参/データで送る/会計ソフトを共有する | 毎年続けるなら、データで渡せる形にしておくと翌年が楽になる |
なかでも、記帳をどちらが行うかは、依頼の進み方を大きく左右します。自分で会計ソフトに入力している場合は、税理士はその内容を確かめて申告書を作ります。入力をしていない場合は、通帳と領収書から1年分の取引を入力するところから始まるため、資料を早めに渡すことがより大切になります。
費用は、売上や取引の量、記帳の状態、青色申告か白色申告か、消費税の申告の有無などで変わります。見積もりを依頼するときは、これらを最初に伝えると、正確な見積もりを受け取りやすくなります。
依頼してから困りやすいこと
確定申告を初めて税理士に依頼した人が困りやすい点を、よくある形で挙げます。
- 資料を渡した後に、税理士からの質問が多く届き、答えるのに時間がかかる
- 家庭と事業で共用している費用(家賃、車、通信費)の割合を、根拠を示して決めていなかった
- 現金で受け取った売上や、現金で払った経費の記録が残っていない
- 年の途中で買った車や設備の契約書が見当たらない
- 申告書ができた後に、思ったより納税額が大きいと分かり、納付の準備が間に合わない
1つ目から4つ目は、資料の準備で防げます。質問の多くは、通帳の入出金のうち、何の取引か分からないものについてです。通帳の明細に、取引の相手や内容を簡単に書き込んでおくだけで、質問は大きく減ります。
5つ目は、確定申告をスポットで依頼する場合に起こりやすい点です。申告書ができるまで所得と税額が分からないため、納付の準備が3月にずれ込みます。前年の所得がおおよそ分かっていれば、年明けの段階で税理士に見込みを聞いておくと、納付の資金を準備しやすくなります。
翌年の確定申告を楽にする準備
確定申告を一度税理士に依頼すると、翌年に向けて準備しておきたいことが見えてきます。
- 事業用の口座とクレジットカードを分け、事業の入出金をそこに集める
- 毎月、通帳とカードの明細から取引を記帳するか、資料を毎月まとめて渡す
- 家事按分の割合と、その根拠(面積、使用時間、走行距離など)を年の初めに決めて残す
- 10万円以上の買い物をしたら、契約書や請求書を別に保管する
- 年の途中で所得の見込みを確かめ、納税と翌年の予定納税の資金を準備する
毎月の記帳ができていれば、確定申告の時期にまとめて資料を集める必要がなくなり、年の途中で所得の見込みも分かります。年の途中の数字を見ながら、青色申告への切り替えや、消費税の申告の方法、法人にするかどうかを考えられるようになるのも、毎月の数字があってこそです。
確定申告だけを依頼する形と、毎月の記帳や相談まで含めた顧問の形の違いは、個人事業主・フリーランスが税理士と初めて契約する時に知っておきたいことで紹介しています。事業のお金と家庭のお金を分ける考え方は、個人と事業のお金を混ぜると危険?で解説しています。
当事務所の場合
奈須大貴公認会計士・税理士事務所では、公認会計士・税理士の奈須大貴が直接対応し、個人事業主の確定申告のご依頼をお受けしています。最初の相談で、事業の内容と取引の量、記帳の状態をお聞きし、渡していただく資料と日程をご案内します。
確定申告を1回の依頼として進めた後に、毎月の記帳と数字の確認を続ける顧問の形に切り替えることもできます。顧問の形にすると、毎月の試算表で売上と経費が分かり、年の途中で所得税の見通しを立てたり、青色申告や消費税、法人にするかどうかの判断を数字で考えたりできるようになります。
一方で、「申告書の作成だけを、できるだけ安く依頼したい」という場合には、当事務所は合わない可能性があります。顧問契約での支援内容は、税務顧問サービスのページでご案内しています。
確定申告の依頼を考えている方へ
確定申告を税理士に依頼するなら、3月15日の期限から逆算して、年内から1月中に相談し、売上・経費・控除の資料を1月中に渡すのが目安です。まずは、事業用の通帳とカードの明細、請求書の控えがどこにあるかを確かめ、上の一覧と照らし合わせてみてください。
「初めて確定申告を税理士に頼みたい」「今年は記帳が追いついていない」という方は、事業の内容と手元の資料をお聞きしたうえで、依頼の範囲と日程を一緒に整理します。福岡市南区大橋を拠点に、福岡市全域と近郊の個人事業主のご相談をお受けしており、オンラインでの面談にも対応しています。

