財務コンサルとは、会社の数字をもとに、資金繰り、融資、利益計画、設備投資や採用などの判断材料を整え、経営者と一緒に「この先のお金」を考える支援のことです。税務顧問が過去の取引を正しく記録して税金を計算することを中心にするのに対し、財務コンサルはこれから先の数字を見通すことを中心にします。
この記事では、公認会計士・税理士の奈須大貴が、財務コンサルと税務顧問の違いと、中小企業の財務コンサルで実際に毎月行うことを解説します。利益とお金の差を確かめる計算例と、頼む前の確認表も紹介します。
財務コンサルと税務顧問は「見る方向」が違う
財務コンサルと税務顧問は、使う数字は同じでも、その数字に投げかける問いが違います。税務顧問は「この1年の取引を正しく処理し、税金をいくら納めるか」を確かめ、財務コンサルは「この数字のまま進むと、半年後や1年後に何が起きるか」を確かめます。
| 項目 | 税務顧問 | 財務コンサル |
|---|---|---|
| 中心になる問い | 取引を正しく記録し、税金を正しく計算できているか | 今後の資金は足りるか、この判断で利益とお金はどう動くか |
| 主に見る期間 | 過去(その月まで、その期まで) | 未来(数か月先から翌期以降まで) |
| 主な成果物 | 試算表、決算書、申告書 | 資金繰り表、利益計画、返済計画、金融機関向けの資料 |
| 期限 | 申告期限など、法律で決まった期限がある | 決まった期限はなく、判断が必要な時期に合わせる |
| 使う数字 | 月次の試算表と決算書 | 同じ試算表と決算書に、今後の予定を加えたもの |
なお、「財務顧問」という言葉は、財務コンサルを1回限りではなく継続して依頼する契約を指して使われることが多いようです。どちらも法律で定義された言葉ではないため、名前よりも、何を、どの頻度で、誰が見てくれるのかを確かめることが大切です。
中小企業の財務コンサルで毎月行うこと
財務コンサルというと、M&Aや大きな資金調達のような特別なプロジェクトを思い浮かべるかもしれません。しかし中小企業の財務コンサルの中心は、毎月の試算表を起点にした、地道な確認と見通しの更新です。
経営者がふだん抱く問いと、財務コンサルで確かめる数字を対応させると、次のようになります。
| 経営者の問い | 確かめる数字 |
|---|---|
| 先月は儲かったのか | 売上、粗利、固定費、営業利益の前年同月や計画との差 |
| 3か月後に資金は足りるか | 資金繰り表の月末残高の見通し(入金と支払の予定、借入の返済額) |
| 決算でいくら納税することになるか | 期の途中までの利益と、決算までの見込みから立てた納税額の見通し |
| 人を1人増やしてよいか | 採用後の人件費を、今の粗利でまかなえるか |
| 設備を買うなら借入か手元資金か | 返済額と、利益と減価償却費から生まれる返済の元手の比較 |
| 金融機関にどう説明するか | 試算表、資金繰り表、借入金の一覧、借入後の収支計画 |
どの問いも、月次の試算表が遅れたり、科目の入れ方が月ごとにばらついたりしていると、正しく答えられません。財務コンサルの効果は、毎月の数字が早く、同じ基準でそろっていることが前提になります。試算表を毎月どの順番で確かめるかは、試算表の見方|経営者が毎月5分で確認する5つの順番で解説しています。
利益が出ているのにお金が残らない理由を、1年の数字で確かめる
財務コンサルの相談で特に多いのが、「決算は黒字なのに、預金が増えていない」という悩みです。利益とお金の動きは一致しないため、その差を1年分の数字で分解すると、原因が見えてきます。
ここでは仮の数字で、ある会社の1年間を見てみます。税引前の利益は1,000万円で、その年に支払った法人税などの税金は300万円だったとします。
| 項目 | 金額 | お金の動き |
|---|---|---|
| 税引前の利益 | 1,000万円 | 出発点 |
| 支払った税金 | −300万円 | 利益から出ていくお金 |
| 減価償却費 | +200万円 | 費用だが、その年にお金は出ていない |
| 借入金の元金の返済 | −600万円 | 費用にならないが、お金は出ていく |
| 設備の購入 | −400万円 | 費用になるのは一部だが、お金は購入時に出ていく |
| 売掛金の増加 | −150万円 | 売上は立ったが、まだ入金されていない |
| 1年間の預金の増減 | −250万円 | 利益1,000万円でも預金は減る |
計算すると、1,000万円−300万円+200万円−600万円−400万円−150万円で、預金は250万円減っています。利益だけを見ると順調な1年でも、返済と設備の購入、売掛金の増加が重なると、手元のお金は減ります。
この表から分かるのは、返済の元手は「税金を払った後の利益に、減価償却費を足した金額」だということです。この例では700万円+200万円=900万円で、年600万円の返済はまかなえています。預金が減った主な原因は、設備の購入を手元資金で行ったことと、売掛金の回収が遅れたことにあります。
財務コンサルでは、この表を決算が終わってから作るのではなく、期の途中で翌期の分まで作ります。設備の購入を借入でまかなうか、売掛金の回収条件を見直すかといった判断を、お金が減る前に検討できるからです。お金の流れを見える化する考え方は、利益は出ているのに資金が不足…?“お金の流れ”を見える化して経営を安定させる方法でも紹介しています。
財務コンサルが必要になりやすい場面
すべての会社に、いつでも財務コンサルが必要なわけではありません。取引が少なく、手元資金に十分な余裕があり、大きな投資や採用の予定もない時期なら、毎月の試算表と決算前の納税額の確認だけで足りることもあります。
一方で、次のような状況にあるときは、財務の視点で数字を見る価値が大きくなります。
| 状況 | まず確かめたい数字 |
|---|---|
| 試算表が届くのが2か月以上あと | 月次の締めの流れと、資料を渡す時期 |
| 黒字なのに預金が減っている | 上の表と同じ形での、利益と預金の差の分解 |
| 決算の直前まで納税額が分からない | 期の途中までの利益と、決算までの見込み |
| 融資を相談したい、または借換えを考えている | 資金繰り表、借入金の一覧、借入後の収支計画 |
| 採用や昇給、値上げを考えている | 粗利と、粗利に占める人件費の割合 |
| 設備投資や出店を考えている | 返済の元手と、投資後の返済額の比較 |
融資の相談で金融機関が決算書のどこを見るかは、銀行は決算書のどこを見る?融資審査の5つのポイントと中小企業が準備すべき資料で詳しく解説しています。なお、財務コンサルを受けたからといって、融資の実行や審査の通過が約束されるわけではありません。財務コンサルの役割は、会社の状況を数字で正確に説明できる状態を整えることです。
財務コンサルを頼む前に確かめたいこと
財務コンサルの中身は、依頼先によって大きく異なります。契約の前に、次の点を確かめておくと、依頼してから「思っていた支援と違う」となることを防げます。
| 確かめること | 確かめ方 |
|---|---|
| 誰が対応するか | 資格を持つ本人が対応するのか、担当者が対応するのかを確かめる |
| どの数字を使うか | 顧問税理士が作る試算表をそのまま使うのか、別に集計し直すのかを確かめる |
| どの頻度で見るか | 毎月、四半期ごと、必要なときだけなど、数字を一緒に確認する頻度を確かめる |
| 何が手元に残るか | 資金繰り表や利益計画を、自社で更新できる形で受け取れるかを確かめる |
| 税務とどうつながるか | 納税額の見通しや、税金に関わる判断を誰が確認するかを確かめる |
| 範囲はどこまでか | 金融機関向けの資料づくりや、金融機関との面談への同席が含まれるかを確かめる |
特に「どの数字を使うか」は見落とされがちです。税務顧問と財務コンサルを別々に頼む場合、試算表の締めの時期や科目の入れ方がそろっていないと、同じ月の利益が2通り出てきてしまいます。税務と財務を同じ数字の上で見られるかどうかは、依頼先を選ぶうえで大切な基準です。
当事務所の場合
奈須大貴公認会計士・税理士事務所では、公認会計士・税理士の奈須大貴が直接対応します。税務顧問の中で月次決算を行い、毎月の試算表をもとに、売上や粗利が計画どおりか、資金繰りに問題がないかを経営者と一緒に確認しています。
年間の利益と納税額は、第2四半期頃から見通しを立て、第3四半期で精度を高めて決算に備えます。融資を考えている場合は、試算表や資金繰り表、借入後の収支計画の整理など、金融機関に説明するための資料づくりも支援します。税務と財務を同じ数字の上で見られることが、当事務所の財務コンサルの特徴です。
代表は大手監査法人で会計監査とIPO支援を経験しており、当事務所は認定経営革新等支援機関でもあります。一方で、「決算と申告だけを、できるだけ安く依頼したい」という場合には、当事務所は合わない可能性があります。支援の内容は、税務顧問サービスのページでご案内しています。
よくあるご質問
財務コンサルを名乗るのに資格は必要ですか?
財務コンサルを名乗るために必要な資格はありません。ただし、税金の申告の代理や、個別の税務相談は、原則として税理士または税理士法人でなければ行えません(税理士法第52条)。財務の判断には税金の見通しが欠かせないため、依頼先が税務まで確認できるかを確かめておくと安心です。
財務コンサルを受ければ、融資は通りやすくなりますか?
融資の審査は金融機関が行うもので、財務コンサルによって結果が約束されることはありません。ただ、資金の使い道や返済の見通しを数字で説明できる状態にしておくことは、金融機関と話をするうえでの前提になります。
財務の相談先を探している方へ
財務コンサルとは、毎月の数字から「この先のお金」を見通し、経営者が判断するための材料を整える支援です。まずは、上の計算例と同じ形で自社の1年間の利益と預金の差を分解し、どこでお金が出ていっているのかを確かめてみてください。
「黒字なのに預金が増えない理由を知りたい」「税務だけでなく、資金繰りや融資の判断も一緒に考えてほしい」という方は、直近の試算表や決算書をもとに状況をお聞かせください。今の税理士に伝える前の段階でも相談でき、相談しただけで今の顧問契約を終える必要はありません。福岡市南区大橋を拠点に、福岡市と春日市・大野城市・那珂川市・太宰府市・筑紫野市などの近郊に対応しており、オンラインでの面談も可能です。

