株式会社と合同会社の違い|税金は同じ。差が出る5つの場面と、10年間の費用で比べる選び方

株式会社と合同会社の違いは、税金や社会保険、決算の作業にはほとんど出ません。差が出るのは、設立の費用、役員の任期ごとの登記、決算公告、利益の分け方と意思決定、そして後で株式会社に変えるときの手続きの5か所です。どちらを選ぶかは、この5か所が自社にどれだけ関わるかで決まります。

この記事では、公認会計士・税理士の奈須大貴が、2つの会社で同じになる点と違う点を分けて整理し、10年間にかかる費用を仮の数字で比べたうえで、決める前に確かめる3つの問いを解説します。

税金・社会保険・決算の作業は、どちらも同じ

まず、株式会社か合同会社かで変わらないものを確かめておきます。ここが同じだと分かると、比べるべき点がぐっと絞られます。

項目株式会社合同会社確かめた先
法人税の扱い普通法人普通法人国税庁「No.5759 法人税の税率」は会社の種類で区分していない
役員報酬のルール取締役などが役員業務執行社員が役員国税庁「No.5200 役員の範囲」に合同会社の業務執行社員が挙がる
社会保険法人の事業所として加入法人の事業所として加入日本年金機構「新規適用の手続き」は、事業主のみの場合を含め常時従業員を使用する法人事業所を強制適用としている
消費税・地方税法人として申告法人として申告会社の種類による区別はない
毎月の記帳と決算書・申告書の作成必要必要作業の中身は同じ

法人税の税率表は、資本金の額などで区分されており、「株式会社」「合同会社」という区分はありません。役員報酬も、合同会社の業務執行社員は税務上の役員として扱われるため、期首から3か月以内に決めて1年間同じ額を払うといったルールは株式会社と変わりません。

つまり、「合同会社のほうが税金が安い」「株式会社のほうが節税しやすい」ということは、会社の種類だけでは起こりません。利益や納税額を左右するのは、どちらを選んでも、売上と費用の見通し、役員報酬の額、決算月の選び方です。

差が出るのは5か所だけ

違いが出る5か所を、先に一覧にします。中小機構のJ-Net21「株式会社と合同会社のどちらがよいか」も、ほぼ同じ項目で比べています。

差が出る場面株式会社合同会社
① 設立の費用定款の認証が必要。登録免許税の最低額は15万円定款の認証は不要。登録免許税の最低額は6万円
② 役員の任期と登記取締役の任期は原則2年、定款で最長10年。再任でも登記が必要役員の任期がない
③ 決算公告毎年の義務がある義務がない
④ 利益の分け方と意思決定持っている株式の数に応じる定款で出資の割合と違う分け方にできる
⑤ 後で株式会社にするとき—組織変更の手続き(債権者への公告など)と登記が必要

このうち①は設立のときに1回、②③は設立した後に繰り返し、⑤は必要になったときに1回かかる費用です。比べるときは、設立の費用だけでなく、何年か続けたときの合計で見ることが大切です。

① 設立の費用:定款の認証と登録免許税

株式会社は、作った定款を公証人に認証してもらう必要があります。日本公証人連合会の「会社の定款認証手数料の改定」によると、認証の手数料は資本金の額などが100万円未満なら3万円、100万円以上300万円未満なら4万円、それ以外は5万円です。2024年12月からは、資本金100万円未満で、発起人が3人以下の個人、発起人が設立時の株式をすべて引き受ける、取締役会を置かない、という条件をすべて満たすと1万5,000円になりました。

合同会社は、法務省の「合同会社の設立手続について」にあるとおり、定款に公証人の認証を受ける必要がありません。

設立の登記にかかる登録免許税は、国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」によると、どちらも資本金の額の1,000分の7ですが、最低額が違います。株式会社は15万円、合同会社は6万円です。資本金が数百万円の会社では、どちらも最低額で決まります。

定款を紙で作ると、印紙税が4万円かかります(国税庁「No.7141 印紙税額の一覧表(その2)」)。電子定款は電磁的記録で、印紙税の課税対象の文書に含まれないため、かかりません(国税庁「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」)。定款を作る前に、電子定款で作るかどうかを確かめておくと、4万円の差を避けられます。

資本金300万円で、1人で設立し、電子定款を使う場合を比べると次のとおりです。

費用株式会社合同会社
定款の認証の手数料5万円(300万円以上のため)0円(認証が不要)
定款の印紙税0円(電子定款)0円(電子定款)
登録免許税15万円(0.7%は2.1万円で最低額に満たない)6万円(0.7%は2.1万円で最低額に満たない)
合計20万円6万円

差は14万円です。資本金を300万円未満にすれば認証の手数料は4万円になり、差は13万円です。設立の費用だけを見れば合同会社が安く、ここが「合同会社は安く作れる」と言われる理由です。福岡市の特定創業支援等事業の証明書を使って登録免許税を軽くする段取りは、福岡市で会社設立するときの届出先と期限で解説しています。

② 役員の任期と、任期ごとの登記

株式会社の取締役の任期は、原則として選任後2年以内に終わる事業年度の最後の定時株主総会までです。株式を自由に譲れない会社(公開会社でない会社)は、定款で最長10年まで伸ばせます(法務省「役員の変更の登記を忘れていませんか?」)。

注意したいのは、任期が来て同じ人がそのまま続ける場合も、「重任」として役員変更の登記が必要なことです。登録免許税は資本金1億円以下の会社で1件1万円です。登記を怠ると100万円以下の過料の対象になり、最後の登記から12年がたつと、休眠会社として解散したものとみなされる手続きの対象にもなります。

社長1人の会社で任期を10年にすると、登記の回数は減りますが、次の重任の時期を忘れやすくなります。任期を延ばす場合は、満了する事業年度を決算の予定表に書いておくと安心です。

合同会社には、役員の任期の定めがありません。社員が変わらない限り、任期ごとの登記は不要です。

③ 決算公告:株式会社だけにある毎年の義務

株式会社は、定時株主総会が終わった後、遅滞なく貸借対照表(大会社は損益計算書も)またはその要旨を、定款で定めた方法で公告しなければなりません。国立印刷局の「会社法 法定公告について」では、公告を怠ると100万円以下の過料の対象になると案内しています。

公告の方法は、官報、日刊新聞、電子公告のほか、貸借対照表そのものを自社のホームページに5年間載せ続ける方法もあります(中小企業庁「「決算公告」は、どのように取り扱いますか?」)。官報の掲載料は、同じ案内の令和4年1月1日現在の料金で、最も小さい枠(2枠)でも税込74,331円です。

合同会社には、決算公告の義務がありません。毎年かかる手間と費用の差としては、設立の費用より大きくなることがあります。

④ 利益の分け方と、意思決定のしかた

株式会社では、配当は持っている株式の数に応じて分けられ、株主総会での議決権も出資の割合に応じます。合同会社では、定款に定めれば、出資の割合と違う割合で利益を分けられます。意思決定も、原則は社員の過半数で、出資の割合によりません。

たとえば、Aさんが資金を800万円、Bさんが200万円出して2人で会社を作り、Bさんが技術や営業で事業の中心を担う場合を考えます。株式会社では、配当も議決権も原則として8対2になります。合同会社なら、定款で利益の分け方を5対5にするといった決め方ができます。

ただし、出資者が社長1人の会社では、この違いはほとんど関係しません。差が意味を持つのは、出資者が複数いて、お金を出す人と事業を担う人が違う場合です。

⑤ 後で株式会社にするときの手続き

合同会社で始めて、後から株式会社に変えることもできます。これを組織変更といいます。法務局の「持分会社(株式会社への組織変更)の登記申請書の例」によると、主な手続きは次のとおりです。

  1. 組織変更計画を作り、効力が生じる日の前日までに総社員の同意を得る
  2. 官報で公告し、知れている債権者には個別に催告する(定款の定めにより、官報に加えて日刊新聞か電子公告で公告すれば催告を省ける)
  3. 債権者が異議を述べられる期間として、1か月以上を置く
  4. 効力が生じた後、株式会社の設立の登記と合同会社の解散の登記を同時に申請する

登録免許税は、株式会社の設立の側が資本金の1,000分の1.5(3万円に満たないときは3万円)、解散の側が3万円です。資本金300万円なら、合わせて6万円になります。これに官報の公告の掲載料と、専門家に頼む場合の報酬が加わります。

費用よりも気をつけたいのは、日数です。公告から1か月以上の期間が必要なので、「来月、出資を受けたい」「取引先から株式会社でないと契約できないと言われた」という段階で始めると間に合わないことがあります。

10年間の費用を、仮の数字で比べる

5か所の違いを、10年間の合計で比べます。資本金300万円、社長1人、電子定款で設立するとし、公的な費用(手数料、登録免許税、官報の掲載料)だけを数えます。官報の掲載料は1回7万円と置き、組織変更の公告は4万円と置いた仮の数字です。

10年間にかかる公的な費用の比較(仮の数字)
項目株式会社(任期2年・官報で公告)株式会社(任期10年・ホームページで公告)合同会社で始め、6年目に株式会社へ合同会社のまま
設立の費用20万円20万円6万円6万円
役員の重任の登記5回×1万円=5万円1回×1万円=1万円0円0円
決算公告10回×7万円=70万円0円0円0円
組織変更——登録免許税6万円+公告4万円=10万円—
10年間の合計95万円21万円16万円6万円

合計を検算すると、20+5+70=95万円、20+1+0=21万円、6+10=16万円です。組織変更した後の5年間は、ホームページで公告し、任期を10年にする前提で、この期間に追加の費用はないものとしています。

表から読み取れるのは、株式会社の費用は設立の費用よりも、任期と公告の方法の選び方で大きく変わることです。任期を10年にし、ホームページで公告すれば、合同会社との差は10年間で15万円ほどです。反対に、任期2年で毎年官報に載せると、差は約90万円に広がります。

司法書士などに登記を頼む場合は、その都度報酬がかかります。登記の回数が多い形ほど、表の差はさらに広がります。

決める前に確かめる3つの問い

費用の差がこの程度だと分かれば、決め手は事業の今後です。次の3つの問いに答えてみてください。

問い「はい」なら「いいえ」なら
出資者は、この先も自分1人(または家族)だけか合同会社でも困りにくい利益の分け方と意思決定の決め方を先に話し合う
取引先、金融機関、許認可の窓口から、株式会社であることを求められそうか株式会社を選ぶ合同会社も候補になる
数年のうちに、社員や後継者に持ち分を渡す、外から出資を受ける、上場を目指す予定があるか株式会社を選ぶ(合同会社は上場できない)合同会社も候補になる

2つめの問いは、思い込みで判断せず、主な取引先や、借入を考えている金融機関、事業に必要な許認可の窓口に、会社の種類で扱いが変わるかを設立の前に確かめることをおすすめします。3つの問いのどれかに「はい」があれば株式会社、すべて「いいえ」なら合同会社を選び、必要になった時点で組織変更を考える、という順番が判断しやすい形です。

選ぶときによくある迷いと失敗

よくある迷いや失敗起きること防ぎ方
「株式会社のほうが節税になる」と考えて選ぶ会社の種類では税金は変わらず、期待した効果が出ない節税は役員報酬の額と決算月、利益の見通しで考える
任期を10年にして、重任の登記を忘れる過料の対象になり、長く放置すると休眠会社の手続きの対象になる任期が満了する事業年度を決算の予定表に書く
決算公告の義務を知らずに設立する毎年の手間と費用を見込んでいない設立の前に公告の方法を決め、定款に書く
合同会社で始め、出資を受ける直前に組織変更を考える公告の期間が1か月以上必要で、予定に間に合わない出資や大きな契約の予定が見えた段階で、早めに準備する
出資者が複数なのに、利益の分け方を決めずに設立する後から分け方でもめる定款を作る前に、出資と役割と分け方を書面にする

どちらを選んでも、設立の前後に決めることは同じ

株式会社でも合同会社でも、設立の前後に税理士と決めることは変わりません。決算月、資本金の額、役員報酬の額、毎月の記帳のしかたです。特に役員報酬は、設立から3か月以内に決め、1年間同じ額を払う必要があります。

設立の前・直後・最初の決算までに何をいつ決めるかは、会社設立で税理士に頼めることは?で、役員報酬の額の決め方は、役員報酬の決め方で詳しく解説しています。個人事業から会社にする時期そのものに迷っている場合は、法人成りのタイミングはいつ?も参考にしてください。

会社の種類は一度決めると変えるのに手間がかかりますが、税務の段取りはどちらでも同じです。会社の種類を決めるのと同じ時期に、最初の1年の利益と納税額の見通しを立てておくと、設立した後に慌てずに済みます。

当事務所の場合

奈須大貴公認会計士・税理士事務所では、公認会計士・税理士の奈須大貴が直接対応します。会社の設立の前には、この記事の3つの問いを一緒に確かめ、決算月、資本金、役員報酬の考え方を、事業の見通しの数字から整理します。定款の作成や登記の申請、社会保険の手続きは、連携している専門家と分担して進めます。

設立した後は、月次決算で毎月の試算表を作り、第2四半期頃から利益と納税額の見通しを立て、第3四半期で精度を高めて決算に備えます。最初の決算から、数字を経営の判断に使える状態をつくることが、当事務所の支援の中心です。顧問契約での支援内容は、税務顧問サービスのページでご案内しています。

一方で、「決算と申告だけを、できるだけ安く依頼したい」という場合には、当事務所は合わない可能性があります。

よくあるご質問

合同会社の代表者の肩書きは、何になりますか?

合同会社には取締役がいないため、代表者の肩書きは「代表取締役」ではなく「代表社員」になります。取引先への案内や名刺を作る前に、この点も含めて会社の種類を決めておくと手戻りがありません。

株式会社から合同会社に変えることもできますか?

できます。株式会社から合同会社への組織変更も、組織変更計画への総株主の同意と、官報での公告や債権者への催告を経て行います(法務局「株式会社(持分会社への組織変更)の登記申請書の例」)。どちらの方向でも、公告の期間を含めて1か月以上を見込んでおく必要があります。

株式会社か合同会社かで迷っている方へ

株式会社と合同会社の違いは、税金ではなく、設立の費用、役員の任期の登記、決算公告、利益の分け方、後の組織変更の5か所に出ます。10年間の合計で見ると、株式会社の費用は任期と公告の方法の選び方で大きく変わり、決め手は出資者の顔ぶれと、取引先・金融機関の求めと、数年後の事業の姿です。

「どちらの会社にするか、まだ決めきれていない」「設立と同時に、最初の1年の数字の見通しも立てたい」という方は、事業の計画と出資の予定をお聞かせください。福岡市南区大橋を拠点に、福岡市全域と春日市・大野城市・那珂川市・太宰府市・筑紫野市に対応しており、オンラインでのご相談も可能です。


投稿日

カテゴリー:

,

投稿者:

2026年11月
月 火 水 木 金 土 日
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30