福岡市の住民税の特別徴収|給与支払報告書の提出から毎月の納付、入社・退職の手続きまで1年の流れ

福岡市の住民税の特別徴収とは、会社などが従業員の毎月の給与から住民税を差し引き、本人に代わって福岡市に納める仕組みです。会社は1月31日までに給与支払報告書を福岡市に出し、5月頃に届く税額決定通知書の額を、6月から翌年5月までの12回に分けて給与から引いて納めます。

この記事では、公認会計士・税理士の奈須大貴が、福岡市の特別徴収の1年の流れ、納期の特例を使ったときの期限、入社と退職のときの手続き、経理の段取りで気をつけたい点を解説します。

特別徴収は、会社が住民税を給与から引いて納める仕組み

住民税は、前の年の所得に対して、その年の6月から翌年の5月にかけて納める税金です。会社員の場合は、会社が毎月の給与から差し引いて市区町村に納める「特別徴収」が原則です。自分で納付書や口座振替で納める方法は「普通徴収」と呼ばれます。

福岡市の給与からの特別徴収のページでは、特別徴収は地方税法と福岡市の条例で定められた事業主の義務だと説明されています。福岡県と県内の市町村は、平成29年度から特別徴収を徹底して進めており、まだ特別徴収をしていない事業主も特別徴収義務者として指定されます。

対象になるのは、前の年に給与を払い、その年の4月1日にも給与を払っている従業員です。パートやアルバイトも含まれます。福岡市のページでは、従業員が少ないことだけを理由に特別徴収をしないことはできないとされています。

1年の流れ

特別徴収の1年は、1月の給与支払報告書の提出から始まります。

住民税の特別徴収の1年の流れ
時期会社がすること
1月31日まで前の年に給与を払った人の給与支払報告書を、住んでいる市区町村に出す
5月頃市区町村から税額決定通知書が届く。従業員用の通知書を本人に渡す
6月の給与通知書の月額で、住民税の天引きを始める
毎月天引きした住民税を、原則として翌月10日までに納める
入社・退職のとき給与所得者異動届出書を出し、天引きの引継ぎや精算をする

給与支払報告書は、従業員が住んでいる市区町村ごとに出します。福岡市に住む従業員の分は福岡市に、春日市や大野城市に住む従業員の分はそれぞれの市に出します。税額決定通知書も市区町村ごとに届き、納付もそれぞれに行います。従業員の住所が分かれている会社ほど、届く書類と納付先が増えるので、市区町村ごとの一覧をつくっておくと漏れを防げます。

税額決定通知書は、eLTAX(地方税のオンライン手続き)で給与支払報告書を出す場合、電子で受け取ることもできます。会社用と従業員用のそれぞれについて、紙か電子かを提出のときに選び、年の途中では変えられません。

6月の天引きの額は、初回だけ多いことがある

住民税の年額は12回に分けて引きますが、割り切れない端数は、6月分(初回)にまとめられるのが一般的です。そのため、6月だけ天引きの額が多く、7月から翌年5月までは同じ額になります。

給与計算では、6月の給与の前に、届いた通知書の月額を従業員ごとに入れ替えます。前の年の月額のまま6月の給与を払ってしまうと、引きすぎや引き不足が出て、7月以後に調整が必要になります。5月の通知書が届いたら、6月の給与計算の前に入れ替えを終える段取りにしておきます。

納期の特例を使うと、年2回の納付になる

天引きした住民税は、原則として毎月、翌月10日までに納めます。ただし、給与を受ける人が常時10人未満の会社は、市区町村に申請して承認を受けると、年2回にまとめて納める「納期の特例」を使えます。福岡市のページでは、期限は次のとおりです。

天引きした月納期の特例の期限
6月から11月までの給与の分12月10日
12月から翌年5月までの給与の分6月10日

たとえば、従業員5人の住民税の天引きが毎月合計6万円の会社では、納期の特例を使うと、12月10日に6か月分の36万円、6月10日に36万円をまとめて納めます(数字は仮のものです)。

納付の回数が減るぶん、事務は楽になりますが、まとめて納める月の資金が必要になります。12月は賞与や年末の支払いが重なり、6月は賞与の時期と重なることがあります。給与から引いたお金は会社のものではないので、普段の運転資金と混ざらないよう、毎月の天引きの額を別にしておく会社もあります。

所得税の源泉徴収にも、同じ名前の納期の特例があります。こちらは国(税務署)への手続きで、期限も7月10日と翌年1月20日と異なります。住民税と所得税で、承認を受けているかどうかと期限を、それぞれ確かめておきます。

入社と退職のときの手続き

特別徴収で手続きを間違えやすいのが、年の途中の入社と退職です。

場面会社がすること
前の会社で特別徴収されていた人が入社前の会社が作った異動届出書を受け取り、引き継いで天引きを続ける
普通徴収だった人が入社本人の希望を確かめ、特別徴収への切替えを申し出る
6月から12月に退職異動届出書を出し、残りの住民税は本人の普通徴収にするか、本人の申出で一括徴収する
1月から4月に退職異動届出書を出し、残りの住民税は原則として最後の給与や退職金から一括徴収する

福岡市のページでは、退職などで給与から引けなくなったときは、異動届出書を速やかに出すよう案内されています。届出が遅れると、すでに退職した人の分の納付書が届き続けたり、本人に普通徴収の通知が遅れて届いたりします。退職の手続きの一覧に、異動届出書を入れておきます。

初めて人を雇うときと、退職金を払うとき

会社を設立したばかりで初めて従業員を雇った年は、まだ特別徴収の税額決定通知書が届いていません。入社した人が前の勤め先で特別徴収されていた場合は、前の勤め先から異動届出書を受け取って引き継ぎます。それ以外の人は、その年の住民税は本人の普通徴収のままとなることが多く、翌年1月に給与支払報告書を出すと、6月から会社の特別徴収が始まります。本人が希望すれば、年の途中から特別徴収に切り替える申出もできます。

退職金を払うときは、毎月の給与とは別の扱いになります。退職金にかかる住民税は、退職金を払うときに会社が差し引き、原則として翌月10日までに、その年の1月1日に退職者が住んでいた市区町村に納めます。毎月の住民税と納付先や納付書が分かれるので、退職金を払う月は、給与の分と退職金の分を分けて確かめます。

普通徴収にできる場合

福岡市では、次のような場合には、給与支払報告書と一緒に普通徴収切替理由書を出すことで、普通徴収にできます。

区分内容
退職者退職した人、またはその年の5月末日までに退職する予定の人
給与が毎月ない人給与の支払が毎月ではない人
給与が少ない人年間の給与の支払額が93万円以下の人
ほかで特別徴収されている人ほかの勤め先で特別徴収されている人(乙欄の人)
事業専従者個人事業主の家族の専従者(個人事業主の場合のみ)
人数が少ない場合上の人を除いた受給者が2人以下

これ以外の理由では、原則として特別徴収になります。パートやアルバイトでも、年間の給与が93万円を超え、毎月給与を払っている人は特別徴収の対象になる、と考えておきます。

経理の段取りで確かめたいこと

特別徴収は、給与計算と納付の両方にまたがるため、担当者が変わると抜けやすい仕事です。次の点を、毎年の段取りとして確かめます。

時期確かめること
12月から1月年末調整と給与支払報告書の提出(1月31日まで)を、市区町村ごとに漏れなく終えたか
5月届いた通知書の月額を、6月の給与の前に入れ替えたか
毎月天引きした額と納付した額が、市区町村ごとに一致しているか
6月と12月納期の特例を使う場合、まとめて納める資金を確保したか
入社・退職のつど異動届出書を出したか

試算表では、天引きした住民税は「預り金」に残ります。納付の後に預り金の残高がゼロに戻っているかを毎月見ることで、納付漏れや二重納付に気づけます。経理の手間を減らす進め方は、経理の効率化の記事で紹介しています。

よくあるご質問

従業員が1人だけでも、特別徴収をしなければなりませんか?

福岡市のページでは、従業員が少ないことだけを理由に特別徴収をしないことはできないとされています。上の表の普通徴収にできる場合に当てはまらなければ、従業員が1人でも特別徴収の対象です。

年の途中で辞めた人の給与支払報告書も出しますか?

前の年の途中で退職した人も、原則として給与支払報告書を出します。ただし、退職した人で、その年の給与の支払額が30万円以下の人は、提出を省略できることになっています。省略できるかどうかを迷う場合は、出しておくほうが確実です。

当事務所の場合

奈須大貴公認会計士・税理士事務所は、福岡市南区大橋を拠点に、福岡市と近郊の会社の税務顧問をしています。公認会計士・税理士の奈須大貴が直接対応し、月次決算で毎月の試算表をつくる中で、預り金の残高や、まとめて納める税金の時期と額を、資金繰りの予定に入れて確かめます。

年末調整と給与支払報告書、源泉所得税と住民税の納付の時期は、法人税や消費税の納付とあわせて、1年の税金の予定として整理します。会社を設立したばかりで手続きの全体を知りたい場合は、福岡市で会社設立するときの届出先と期限の記事もあわせてご覧ください。顧問契約での支援内容は、税務顧問サービスのページでご案内しています。

特別徴収の段取りを整えたい方へ

福岡市の住民税の特別徴収は、1月31日までの給与支払報告書、5月の通知書の入れ替え、毎月(または年2回)の納付、入社・退職のときの異動届出書の4つで回っています。まずは、従業員が住んでいる市区町村と、納期の特例の承認を受けているかを一覧にしてみてください。

「担当者が変わって、住民税の手続きがどこまで済んでいるか分からない」「税金の納付が多く、資金繰りの予定が立てにくい」という方は、今の給与計算と納付の流れをお聞かせください。今の税理士に伝える前の段階でも相談でき、相談しただけで今の顧問契約を終える必要はありません。オンラインでの面談にも対応しています。


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