月次決算のやり方は、「資料をそろえる」「残高を合わせる」「月ごとの数字をならす」「比べて見る」の4つの手順に分けられます。中小企業の月次決算で大切なのは、年に1回の決算と同じ細かさで処理することよりも、毎月同じ基準で締め、翌月のうちに数字を経営の判断に使えるようにすることです。
この記事では、公認会計士・税理士の奈須大貴が、4つの手順の中身と、試算表が遅いときの見直し方、月次決算を初めて行う会社が優先する順番を解説します。毎月使える確認表も紹介します。
月次決算は、4つの手順で進める
月次決算とは、1か月ごとに帳簿を締め、その月までの利益や財産の状態を試算表にまとめることです。法律で義務づけられたものではなく、会社が自分の判断のために行います。
手順の全体は、次のとおりです。翌月20日頃までに経営者が数字を見られるようにする場合の、時期の目安も添えています。
| 手順 | 主な作業 | 主に行う人 | 時期の目安(例) |
|---|---|---|---|
| 1.資料をそろえる | 請求書、領収書、通帳やカードの明細、給与の資料を集め、取引を入力する | 経理担当者(税理士事務所が入力する場合もある) | 翌月5日頃まで |
| 2.残高を合わせる | 預金、現金、売掛金、買掛金などの残高を、通帳や取引先の資料と照らし合わせる | 経理担当者、税理士事務所 | 翌月10日頃まで |
| 3.月ごとの数字をならす | 賞与、年払いの費用、減価償却費などを月ごとに割り振り、在庫を反映する | 経理担当者、税理士事務所 | 翌月15日頃まで |
| 4.比べて見る | 前年の同じ月や計画と比べ、増減の理由を確かめる | 経営者、税理士 | 翌月20日頃まで |
時期は会社の規模や体制によって変わります。大切なのは、日付そのものより、毎月同じ時期に同じ順番で進めることです。
1.資料をそろえる
月次決算が遅れる原因の多くは、この最初の手順にあります。請求書や領収書が社内のあちこちに分かれていたり、資料を渡す期限が決まっていなかったりすると、後の手順がすべて遅れます。
まずは、毎月そろえる資料と、その締切日を決めます。預金やクレジットカードの明細を会計ソフトに自動で取り込めるようにすると、入力の手間を減らせます。ただし、自動で取り込まれた取引も、科目が正しいかを人が確かめる必要があります。資料の集め方の見直しについては、毎月の経理、もっとラクにできませんか?税理士と考える経理効率化とクラウド会計で解説しています。
2.残高を合わせる
次に、帳簿の残高が実際の残高と合っているかを確かめます。ここを飛ばすと、入力の漏れや二重計上に気づけず、利益の数字そのものが信用できなくなります。
| 確かめる残高 | 照らし合わせる資料 |
|---|---|
| 預金 | 通帳やインターネットバンキングの月末残高 |
| 現金 | 月末に数えた手元の現金 |
| 売掛金 | 取引先ごとの請求と入金の記録 |
| 買掛金・未払金 | 仕入先ごとの請求書と支払の記録 |
| 借入金 | 金融機関の返済予定表 |
| 仮払金・仮受金 | 中身が分かっているか、正しい科目に振り替えられるか |
仮払金や仮受金は、内容が分からない取引を一時的に置いておく科目です。月をまたいで残り続けると、決算の時期にまとめて調べることになり、原因が分からなくなります。毎月、中身を確かめて振り替えておきます。
3.月ごとの数字をならす
年に1回や数回だけ支払う費用を、支払った月にまとめて計上すると、その月の利益だけが大きく下がり、他の月は実際より良く見えます。月ごとの利益を正しく比べるために、こうした費用を月ごとに割り振ります。
仮の数字で見てみます。賞与を除いた営業利益が毎月120万円の会社が、7月と12月に300万円ずつ、年600万円の賞与を支払うとします。
| 月 | ならす前の営業利益 | ならした後の営業利益 |
|---|---|---|
| 1〜6月、8〜11月(各月) | 120万円 | 70万円 |
| 7月 | −180万円 | 70万円 |
| 12月 | −180万円 | 70万円 |
| 1年間の合計 | 840万円 | 840万円 |
ならした後は、賞与600万円を12か月で割った50万円を毎月の費用にしています。1年間の合計はどちらも840万円で変わりませんが、ならす前の数字では、6月までは毎月120万円の利益が出ているように見え、7月に突然赤字になります。ならした後の数字なら、毎月の本当の稼ぐ力が70万円だと分かります。
同じように割り振ることが多い費用には、次のようなものがあります。
| 費用 | ならし方の例 |
|---|---|
| 賞与 | 支給の見込み額を、支給対象の期間の月数で割って毎月計上する |
| 年払いの保険料、会費、ソフトの利用料 | 年額を12で割って毎月計上する |
| 減価償却費 | 年間の見込み額を12で割って毎月計上する |
| 固定資産税など年に数回払う税金 | 年額の見込みを12で割って毎月計上する |
| 在庫(棚卸資産) | 毎月数えるのが難しければ、主な商品だけ数えるか、帳簿の在庫数を使って反映する |
在庫を反映しないと、仕入が多かった月は利益が少なく、在庫を売った月は利益が多く見えます。在庫の多い業種では、粗利率が月ごとに大きくぶれる原因になります。
4.比べて見る
最後の手順で、ようやく数字を経営に使います。試算表の数字は、単独で見ても良し悪しが分かりません。前年の同じ月や、期の初めに立てた計画と比べて、増減の理由を確かめます。
この手順は、経営者が加わる場面です。経理担当者や税理士だけで済ませず、経営者が数字を見て「この増減は、あの取引のせいだ」と説明できるかを確かめることで、月次決算が判断の材料になります。利益が前年より減ったときに、その原因を売上、粗利率、販管費の3つに分けて確かめる方法は、粗利と営業利益の違いは?2つの差の読み方と、利益が減った原因の分け方で紹介しています。どの順番で数字を見るかは、試算表の見方|経営者が毎月5分で確認する5つの順番で詳しく解説しています。
試算表が遅いときは、待ち時間を3つに分けて見直す
「試算表が届くのが翌月末になる」という会社では、入力や確認の作業そのものより、作業と作業の間の待ち時間で日数がかかっていることがあります。待ち時間は、資料待ち、質問待ち、確認待ちの3つに分けると、どこを縮めればよいかが見えてきます。仮の日数で並べると、次のようになります。
| 待ち時間 | よくある原因 | 縮め方 | 見直し前 → 見直し後(例) |
|---|---|---|---|
| 資料待ち | 資料の締切日が決まっていない。紙の領収書を月末にまとめて渡している | 締切日を決める。預金やカードの明細を自動で取り込む。領収書は撮影して送る | 12日 → 5日 |
| 質問待ち | 中身の分からない取引を、まとめて質問し、まとめて答えている | 質問を週ごとに送る。摘要に取引先と用途を書いておく | 8日 → 3日 |
| 確認待ち | 確認する日が決まっておらず、修正のやり取りが何度も往復する | 確認する日を先に決める。預金の残高合わせを経理側で済ませてから渡す | 10日 → 4日 |
| 合計 | 30日 → 12日 |
この例では、3つの待ち時間を合わせて30日から12日に縮まり、翌月末だった試算表を、翌月の半ば頃に見られるようになります。税理士事務所に入力や試算表の作成を任せている場合も、どの待ち時間が長いかを税理士と一緒に確かめると、会社側と事務所側のどちらで何を変えればよいかを分けて話し合えます。
初めての会社は、優先する順番を決めて始める
月次決算を初めて行う会社が、最初から4つの手順をすべて完璧に行おうとすると、締めるまでに時間がかかり、続かなくなります。次の順番で、少しずつ整えていくのがおすすめです。
| 時期 | 整えること | ここまでで分かること |
|---|---|---|
| 最初の1〜2か月 | 資料の締切日を決め、預金の残高を毎月合わせる | 売上と現預金の動き |
| 3か月目以降 | 売掛金と買掛金の残高を合わせ、仮払金や仮受金を毎月整理する | 入金や支払の遅れ、取引の漏れ |
| 半年目以降 | 賞与や年払いの費用をならし、在庫を反映する | 月ごとの本当の利益 |
| 1年目以降 | 前年の同じ月や計画と比べる | 利益が増えた理由、減った理由 |
月次決算を毎月行うメリットについては、月次決算(毎月の試算表作成)を行うメリットとは!?で紹介しています。
毎月使える月次決算の確認表
毎月の締めの最後に、次の表で抜けがないかを確かめます。経理担当者と経営者で分けているので、それぞれの欄だけを使うこともできます。
| 確かめること | 主に確かめる人 |
|---|---|
| 今月の請求書、領収書、明細がすべてそろっている | 経理担当者 |
| 預金と現金の帳簿の残高が、実際の残高と合っている | 経理担当者 |
| 売掛金に、期日を過ぎても入金されていないものがない | 経理担当者 |
| 仮払金や仮受金に、中身の分からないものが残っていない | 経理担当者 |
| 賞与、年払いの費用、減価償却費を月ごとに計上した | 経理担当者 |
| 在庫を反映した | 経理担当者 |
| 売上と粗利を、前年の同じ月や計画と比べた | 経営者 |
| 固定費の増減の理由を説明できる | 経営者 |
| 現預金の増減と利益のずれを説明できる | 経営者 |
| 決算までの利益と納税額の見通しを更新した | 経営者、税理士 |
当事務所の場合
奈須大貴公認会計士・税理士事務所では、公認会計士・税理士の奈須大貴が直接対応します。顧問契約では月次決算を行い、毎月の試算表をもとに、売上や利益が計画どおりか、現預金や資金繰りに問題がないかを、経営者と一緒に確認しています。この記事の4つの手順でいえば、最後の「比べて見る」に経営者と一緒に取り組むことを大切にしています。
月次決算を続けると、年間の利益と納税額の見通しも立てやすくなります。当事務所では、第2四半期頃から見通しを立て、第3四半期で精度を高めて決算に備えます。資料の集め方や会計ソフトの使い方など、月次決算を早く締めるための経理の見直しも、AIやクラウドの仕組みを使いながら支援しています。
一方で、「決算と申告だけを、できるだけ安く依頼したい」という場合には、当事務所は合わない可能性があります。顧問契約での支援内容は、税務顧問サービスのページでご案内しています。
月次決算を始めたい方、今の締め方を見直したい方へ
月次決算は、資料をそろえる、残高を合わせる、月ごとの数字をならす、比べて見る、の4つの手順で進めます。初めての場合は、資料の締切日と預金の残高合わせから始め、少しずつ手順を増やしていくと続けやすくなります。
「月次決算を始めたいが、何から手をつければよいか分からない」「試算表が届くのが遅く、数字を判断に使えていない」という方は、今の経理の進め方をお聞かせください。今の税理士に伝える前の段階でも相談でき、相談しただけで今の顧問契約を終える必要はありません。福岡市南区大橋を拠点に、福岡市と春日市・大野城市・那珂川市・太宰府市・筑紫野市などの近郊に対応しており、オンラインでの面談も可能です。

