工事台帳とは?経営者が毎月読む3つの数字と、資金繰りへのつなげ方

工事台帳とは、工事ごとに材料費・労務費・外注費・経費などの原価と、請負金額や入金を記録し、工事単位の利益をつかむための帳簿です。会社全体の損益計算書では見えない「どの工事で、いくら残り、いくら立て替えているか」が分かるのが、工事台帳の役割です。

この記事では、公認会計士・税理士の奈須大貴が、工事台帳を作った後に経営者が毎月読む3つの数字と、その数字を資金繰りにつなげる方法を解説します。

工事台帳と、会社全体の損益計算書の違い

工事台帳の作り方や記載項目は、多くの解説で紹介されています。ここでは、作った工事台帳を経営者がどう読むかに絞ります。まず、会社全体の損益計算書と比べると、工事台帳で初めて分かることは次のとおりです。

見たいこと会社全体の損益計算書工事台帳
どの工事が儲かっているか全工事の合計しか分からない工事ごとの粗利と粗利率が分かる
完成していない工事にかかった原価完成するまで損益に出ないことが多い未成工事支出金として工事ごとに分かる
工事ごとに立て替えているお金分からない原価と入金を並べると分かる

工事が完成したときに売上を計上する会社では、工事の途中にかかった原価は、完成するまで費用にならず、未成工事支出金として貸借対照表に残ります。毎月の試算表の利益がよく見えても、その裏で大きな原価が積み上がっていることがあるため、工事台帳を合わせて読む必要があります。

経営者が毎月読む3つの数字

月末に工事台帳を開いたら、次の順番で3つの数字を確かめます。

月末に工事台帳を読む順番

工事が3本並行している会社の、ある月末の工事台帳を仮の数字でまとめると次のようになります。消費税は除いて単純にしています。

工事請負金額進み具合原価の累計(未成工事支出金)入金の累計立て替えているお金
工事A1,000万円6割575万円300万円275万円
工事B600万円9割470万円500万円−30万円(先に受け取っている)
工事C2,400万円3割640万円240万円400万円
合計4,000万円1,685万円1,040万円645万円

1.粗利の見込み

最初に見るのは、工事ごとの粗利が、受注したときの目標どおりに着地しそうかです。請負金額と、原価の累計、これから出る原価の見込みを並べ、目標の粗利を下回りそうな工事を探します。粗利の見込みが下がっている工事は、完成するまでに手を打てる余地があるうちに、担当者と原因を確かめます。

2.未成工事支出金

次に、完成していない工事にかかった原価の累計(未成工事支出金)を見ます。上の例では、3本の工事で合わせて1,685万円が、まだ売上になっていない原価として積み上がっています。

この金額が大きいほど、完成した月にまとめて売上と原価が計上され、月ごとの利益が大きく振れます。決算日をまたぐ工事が多い会社では、どの工事がいつ完成するかによって、その期の利益と納税額が変わるため、年度末の見通しを立てるときにも欠かせない数字です。

3.立て替えているお金

3つ目は、工事ごとに会社が立て替えているお金です。原価の累計から入金の累計を引くと、その工事のために会社がいくら先に支払っているかが分かります。

上の例では、合計645万円を会社が立て替えています。特に工事Cは、進み具合が3割の段階で400万円を立て替えており、工事が進むほど材料費や外注費の支払いが先に出ていきます。利益が出る工事でも、入金より支払いが先に来る間は、手元のお金は減っていきます。

立て替えているお金を、資金繰りにつなげる

工事台帳の3つ目の数字は、そのまま資金繰りの見通しに使えます。工事ごとに、これからの入金の予定(中間金、完成時の請求など)と、支払いの予定(外注費や材料費の支払日)を並べると、どの月に手元のお金が一番少なくなるかが見えてきます。

確かめること工事台帳から読む数字資金繰り表に移すこと
これから入るお金請負金額から入金の累計を引いた残り中間金や完成後の入金の月と金額
これから出ていくお金発注済みで未払いの外注費・材料費支払日ごとの金額
一番苦しい月立て替えているお金が最も大きくなる時期借入や支払条件の相談を前もって考える月

黒字なのにお金が足りなくなるときは、この立て替えの大きさが原因になっていることがあります。工事台帳で立て替えを見ていれば、大きな工事を受注した時点で、何か月先に資金が足りなくなりそうかを前もって確かめられます。

工事台帳を読める状態にするための条件

3つの数字を毎月読むには、工事台帳が月末の時点で締まっている必要があります。そのためには、次の2つがそろっていることが前提です。

  • 会計の伝票を入力するときに、どの工事の原価かを必ず指定している
  • 自社の職人の人件費や、複数の工事で使う費用も、決めたルールで工事に割り振っている

工事台帳を会計とは別にエクセルで作っている会社では、会計の数字と台帳の数字が合わなくなることがあります。会計の伝票から工事台帳が作られる仕組みにすると、二重の入力がなくなり、月末に締まった数字を早く読めるようになります。

当事務所の場合

奈須大貴公認会計士・税理士事務所はTKC全国会の会員で、建設業の顧問先には、TKCの建設業向けクラウド会計システム「DAIC2クラウド」を使った支援をしています。会計の伝票を入力するときに工事を指定することで、工事ごとの原価や未成工事支出金、入金の状況が集計され、公認会計士・税理士の奈須大貴が、粗利の見込みや資金繰り、年度末の利益と経審の点数の見通しを経営者と一緒に確かめます。

工事ごとの管理は、工事番号を決めて記録するところから段階を踏んで始めます。進め方は福岡の建設業の税理士|工事ごとの管理を始めたい会社の仕組みづくりのページで紹介しています。福岡市南区大橋を拠点に、福岡市と近郊の建設会社のご相談をお受けしており、オンラインでの面談にも対応しています。

工事台帳を作っているのに、経営に使えていない方へ

工事台帳は、作ることよりも、毎月の数字を読んで手を打つことに意味があります。まずは進行中の工事を並べ、原価の累計と入金の累計の差、つまり立て替えているお金を工事ごとに計算してみてください。

「工事台帳はあるが、会計の数字と合わない」「利益は出ているのに、工事が重なるとお金が足りなくなる」という方は、今の記録の方法を伺ったうえで、工事台帳を毎月読める状態にするところから一緒に整理します。


投稿日

カテゴリー:

,

投稿者:

2026年10月
月 火 水 木 金 土 日
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031