帳簿はなぜ必要?月次決算の必要性を350年前のフランスから考える

皆さん、こんにちは。
福岡市南区を中心に活動しています公認会計士・税理士の奈須大貴です。

「帳簿は税金の申告に必要だから、つけている」。そのように考えている経営者の方も多いのではないでしょうか。もちろん税務申告は大切ですが、帳簿には会社の状態を知り、次の一手を考えるための役割もあります。今回は少し意外な歴史から、帳簿をつける理由と、毎月の数字を経営に活かす方法をお話しします。

昔のフランスでは、帳簿を出せないと死刑だった!?

今から約350年前の1673年、ルイ14世時代のフランスで「商事勅令」が制定されました。当時は不況のなかで商人の破産が相次いでいました。そして、破産者の共通点として指摘されたのが、帳簿をつけていなかったことです。

帳簿がなければ、商人自身が利益や財産の状況を把握できません。破産した後も、どのような取引を行い、財産がどう動いたのかを確かめられず、取引先やお金を貸した人にも影響が及びます。そこで商事勅令は、商人に帳簿や財産目録の作成を求めました。

破産時に帳簿を提示できなかったら死刑。正確には、破産した商人が所定の帳簿を提示できない場合、詐欺破産者とみなして訴追し、死刑に処するという規定です。帳簿をつけ忘れただけで直ちに死刑になる、という意味ではありません。

それほど帳簿は、商売の実態を確かめるために重要なものと考えられていました。現在の日本でも、会社法第432条第1項は、株式会社に「適時に、正確な会計帳簿」の作成を求めています。では、会社は何のために帳簿をつけ、その数字をどう経営に活かせばよいのでしょうか。

そもそも帳簿はなぜ必要なのか

帳簿は、会社のお金や取引の動きを記録するものです。売上がいつ発生し、何にお金を使い、誰からいくら回収する予定なのか。こうした記録が整理されて初めて、会社の利益や財産の状況を確認できます。経営者の記憶だけに頼らず、数字で事実を確かめるための土台が帳簿です。

取引や財産の動きを、後から確かめられる

例えば、請求書を出した時点では売上が立っていても、代金の入金が数か月先になることがあります。売上の記録だけでなく、売掛金としていくら残っているかも分かれば、「売上はあるのにお金が増えない」理由を調べられます。仕入代金の支払い、借入金の返済、在庫の増減なども同じです。

取引を記録しておけば、決算や税務申告の数字を確かめる資料になります。また、請求漏れや二重払いなど、日々の業務で起きる行き違いに気づく手がかりにもなります。帳簿を整えることは、会社の取引を後から説明できる状態にすることでもあります。

経営者自身が、会社の現状をつかめる

売上が増えていれば、経営は順調だと思いたくなるかもしれません。しかし、仕入価格や人件費も上がっていれば、利益は前年より減っている可能性があります。帳簿があれば、売上だけでなく、利益率や経費、借入金、現預金も合わせて確認できます。

帳簿をつける理由は、過去の取引を残すことだけではありません。会社がいまどこに立っているのかを知り、この先どう動くかを決めるためにも必要です。

帳簿は税務申告のためだけではない

正確な帳簿がなければ、税金の計算や決算書の作成も難しくなります。ただ、年に一度の申告に間に合わせるためだけに記帳していると、数字が経営者の手元に届くのはずっと後になります。それでは、途中で利益が減っていたとしても、対策を考える機会を逃してしまいます。

例えば、「今年は利益が出そうだから設備投資をしよう」と思っていても、手元資金や今後の納税額を確認せずに決めるのは危険です。利益が出ていても、売掛金の回収が遅れたり、借入金の返済が重なったりすれば、現金は足りなくなることがあります。帳簿をもとに利益と現預金の両方を確認して、初めて判断材料がそろいます。

銀行に融資を相談するときも、決算書だけでなく、直近の業績や資金繰りを説明できれば話を進めやすくなります。税務申告のためにつくった数字を、採用や設備投資、借入、納税資金の準備にも使う。そのための第一歩が、帳簿を早めに整えることです。

帳簿をつけた次は、月次決算で毎月数字を出す

帳簿をつけていても、内容を確認するのが決算時だけでは、経営判断に使える場面が限られます。そこで役立つのが月次決算です。月次決算とは、毎月の取引を整理し、売上・経費・利益や、現預金・売掛金・借入金などを確認できる状態にすることです。会社法第432条が月次決算を義務づけているわけではありませんが、帳簿を経営に活かすための実践的な方法といえます。

「今月の売上はいくらか」だけでなく、「いくら利益が残り、回収できていないお金はいくらか」を見ていきます。数字を出すのが早ければ、気づいたことを翌月以降の動きに反映できます。月次決算の基本的な考え方は、既存の記事「月次決算とは?試算表を毎月確認する重要性」でも紹介しています。

月次決算で毎月数字を見る3つの理由

月次決算の目的は、きれいな試算表を作ること自体ではありません。会社の状態をつかみ、計画とのずれを知り、早めに行動することです。特に、次の3つの場面で毎月数字を見る意味が出てきます。

1.会社の状況をタイムリーに把握する

決算書には1年間の結果がまとまりますが、年の途中で起きた変化にはすぐ対応できません。毎月数字を見ていれば、売上の落ち込み、利益率の変化、経費の増加などに早く気づけます。現預金や売掛金の残高も合わせて確認すると、利益と手元のお金がなぜ違うのかを考えるきっかけになります。

例えば売上が前年同月より増えていても、売掛金ばかり増えているなら、入金予定の確認が必要かもしれません。「今は黒字だから安心」と決めつけず、利益と資金の両方を見ることが大切です。

2.計画と実績の進み具合を確認する

売上目標を立てても、実績と比較しなければ、予定どおり進んでいるか分かりません。見るべきなのは売上額だけでなく、売上総利益(粗利)や経費も含めた差です。差が出た理由を調べることで、次に取るべき行動が具体的になります。

例えば、月の計画が売上500万円、粗利率40%なら、粗利は200万円です。実績が売上520万円でも、粗利率が30%に下がっていれば、粗利は156万円。売上は計画より20万円多いのに、粗利は44万円少ない計算です。この場合、売上をさらに増やす前に、仕入価格や値付けを確かめる必要があります。

3.課題を早く見つけて、早く対策する

毎月の確認を続けると、「今月だけの変動」なのか「数か月続く傾向」なのかが見えてきます。利益率の低下が続いているなら価格の見直しを、売掛金の回収が遅れているなら請求や入金管理の確認を考えられます。対策は会社によって異なりますが、異変を知る時期が早いほど選択肢は増えます。

数字を見る際は、変化の原因を経営者と一緒に確かめることも大切です。会計上の計上時期による一時的な差なのか、実際に事業の状態が変わっているのか。そこまで確認して初めて、数字を行動につなげられます。

数字が遅いと、経営判断も遅れる

例えば4月から利益率が落ち始めていたのに、翌年の決算時に初めて気づいたとします。その間、同じ価格で販売を続け、値上がりした仕入代金を負担し続けていたかもしれません。4月や5月の月次決算で変化が分かっていれば、仕入先との交渉や販売価格の見直しを早く検討できたはずです。

数字が遅くなる原因は、記帳作業だけとは限りません。領収書や請求書が集まらない、売上や在庫の情報が共有されない、会計ソフトへの入力が月末にまとめられている、といった運用も関係します。まずはどこで数字が止まっているかを確認し、会社の規模や業種に合った方法で資料の集め方と確認の流れを整えることが大切です。

毎月の数字が早く出るようになると、利益見込みだけでなく、納税資金や今後の支払いについても早めに考えられます。月次決算は、過去を報告するためだけのものではありません。これからの経営判断に間に合うように数字を届けるための仕組みです。

月次決算・業績管理を経営に活かすには

最初から多くの指標を追いかける必要はありません。まずは「毎月いつ数字を確認するか」を決め、自社にとって重要な数字を選ぶところから始めます。売上、粗利、経費、利益、現預金、売掛金などを見て、前月・前年同月・計画と比べてみてください。

次に、気になった数字について「なぜ変わったのか」「来月までに何をするか」を考えます。例えば粗利率が下がったなら商品別の採算を調べる、売掛金が増えたなら入金予定を確かめる、といった具合です。数字を見て終わりにせず、行動を決め、翌月に結果を確認する。この繰り返しが業績管理につながります。

税理士が作成した試算表を受け取っていても、どこを見ればよいか分からない方もいると思います。その場合は、売上と利益、そして現預金の変化から一緒に確認すると入りやすくなります。より詳しい見方は、「経営者が毎月試算表を見るべき理由」も参考にしてください。

よくある質問

帳簿をつけていれば、月次決算は必要ありませんか?

帳簿に取引が記録されていても、数字を年に一度しか確認しなければ、年度の途中で起きた変化に気づきにくくなります。毎月の状況を把握して経営判断に使いたい場合は、記帳に加えて、月ごとに数字を整理・確認することが有効です。

経理を税理士に任せていても、経営者が数字を見る必要はありますか?

会計処理を税理士に任せることと、会社の数字を経営者が把握することは両立できます。細かな仕訳をすべて理解する必要はありません。今月の利益、手元資金、計画との差を確認し、疑問に思った点を一緒に確かめることから始められます。

毎月の数字を、経営判断に使いたい方へ

帳簿をつけることは出発点です。毎月数字を出し、その数字を読み、次の行動を決めるところまで進んで、帳簿は経営に役立つものになります。「数字を経営の最強の武器に」。これは、当事務所が大切にしている考え方です。

奈須大貴公認会計士・税理士事務所では、月次決算や業績管理を重視し、利益だけでなく資金繰りや納税の見通しも確認しながら、経営者の判断を支援しています。事務所の支援内容は税務顧問サービスでご案内しています。

「決算が終わるまで会社の利益が分からない」「試算表はあるけれど、何を判断すればよいか分からない」「数字をもとに採用や投資、資金繰りを考えたい」。そんな経営者の方は、お問い合わせフォームからご相談ください。福岡市の公認会計士・税理士として、会社の現状とこれからを一緒に考えます。

数字を経営の最強の武器に。
奈須大貴公認会計士・税理士事務所
所長 奈須大貴


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