固変分解とは?中小企業が試算表の費用を変動費と固定費に分ける手順

固変分解とは、会社の費用を、売上や数量に連動して増減する「変動費」と、売上に関係なく毎月ほぼ一定にかかる「固定費」に分けることです。中小企業では、試算表の勘定科目ごとにどちらかを決め、判断に迷う科目だけを過去12か月の数字で確かめる方法が、手間と正確さのつり合いがとれた進め方です。

この記事では、公認会計士・税理士の奈須大貴が、試算表を使った固変分解の手順と、科目ごとの分け方の目安を解説します。

固変分解は、限界利益や損益分岐点の出発点

決算書や試算表の損益計算書は、費用を「売上原価」と「販売費及び一般管理費(以下、販管費)」に分けて並べています。この並べ方では、売上が1割増えたときに費用がいくら増えるのかが分かりません。

費用を変動費と固定費に分けると、次の数字を計算できるようになります。

計算できる数字計算のしかた分かること
限界利益売上高 − 変動費売上から、売上に連動する費用を引いて残る利益
限界利益率限界利益 ÷ 売上高売上が1万円増えたときに、そのうち残る金額の割合
損益分岐点売上高固定費 ÷ 限界利益率利益がちょうどゼロになる売上高

どれも経営の判断に使う数字ですが、元になる変動費と固定費の分け方がずれていると、計算結果もずれます。固変分解は地味な作業ですが、ここを毎月同じルールで行えるかどうかで、数字を判断に使えるかが決まります。損益分岐点の計算と使い方は、損益分岐点をわかりやすく|試算表での計算手順と、採用や値下げの判断への使い方で解説しています。

分け方は2つ。中小企業は勘定科目ごとに分けるのが基本

固変分解の方法は、大きく分けて2つあります。

方法やり方向いている場面気をつけること
勘定科目ごとに分ける試算表の科目を1つずつ見て、変動費か固定費かを決める毎月の試算表で続けて使うとき1つの科目に両方の性質が混ざっていると、ずれが出る
月ごとの数字から推計する過去の月ごとの売上と費用を並べ、売上が増えたときに費用がどれだけ増えたかを計算する両方の性質が混ざった科目を確かめるとき一時的な支払いがある月を含めると、結果が大きくぶれる

簿記の教科書では、月ごとの数字から統計の手法(最小二乗法など)で計算する方法も紹介されています。ただ、中小企業が毎月の判断に使うなら、すべての費用をこの方法で分ける必要はありません。まず勘定科目ごとに分け、迷う科目だけ月ごとの数字で確かめる、という組み合わせで十分に役立ちます。

固変分解の4つの手順

勘定科目ごとの分け方の目安

次の表は、中小企業の試算表によく出てくる科目の分け方の目安です。業種や取引の中身によって変わるため、自社の取引に当てはめて確かめてください。

勘定科目分け方の目安迷いやすい点
商品の仕入、材料費変動費在庫の増減を反映した後の金額で扱う
外注費案件や数量ごとに払うなら変動費、毎月定額なら固定費1つの科目に両方が入っていることが多い
運賃、荷造費変動費定額の配送契約なら、その分は固定費
販売手数料、決済手数料変動費月額の基本料金は固定費
役員報酬、正社員の給料と賞与固定費売上に応じて払う歩合給は変動費
パート・アルバイトの給料固定費として扱うことが多い繁忙期だけ増やすなど、売上に合わせて調整しているなら変動費に近い
法定福利費、福利厚生費固定費給料の分け方に合わせる
地代家賃、リース料、保険料固定費売上に応じて払う歩合家賃は変動費
減価償却費固定費設備の使用量で計算している場合は確かめる
水道光熱費固定費として扱うことが多い製造業などで生産量に応じて大きく動くなら、変動費の部分を分ける
通信費、振込手数料、消耗品費固定費金額が小さければ、細かく分けずに固定費にまとめてよい
広告宣伝費固定費売上に応じて払う成果報酬型の広告は変動費
支払利息固定費営業外費用だが、借入金の利息は売上に連動しないため固定費として扱う

迷ったときは、「売上が来月2倍になったら、この費用も2倍近くになるか」と考えます。そうなるなら変動費、ほとんど変わらないなら固定費です。

製造業や建設業では、売上原価の中に工場や現場の人件費、減価償却費が含まれています。売上原価だからといってすべてを変動費にせず、内訳を確かめて分けることが大切です。売上原価で引く粗利と、変動費で引く限界利益の違いは、粗利と限界利益の違いは?差が生まれる場所と、値引きした注文の判断での使い分けで解説しています。

迷う科目は、12か月の数字で確かめる

外注費や水道光熱費のように、変動費と固定費が混ざっている科目は、過去12か月の試算表から、売上が最も多い月と最も少ない月を選んで比べると、おおよその分け方が分かります。

仮の数字で、ある会社の外注費を見てみます。

月売上高外注費
売上が最も多い月1,500万円520万円
売上が最も少ない月900万円340万円
差600万円180万円

売上が600万円違うと、外注費が180万円違っています。ここから、次のように計算できます。

計算すること計算結果
変動する部分の割合180万円 ÷ 600万円売上の30%
毎月の固定部分520万円 − 1,500万円 × 30%70万円
確かめ算340万円 − 900万円 × 30%70万円(一致)

この会社の外注費は、「毎月70万円の固定部分」と「売上の30%の変動部分」でできていると考えられます。実際の取引を確かめ、毎月定額で頼んでいる保守や事務の委託が70万円前後あるなら、その分を固定費、残りを変動費として扱います。

この方法を使うときは、次の点に気をつけます。

  • 大きな修繕や、まとめて払った年払いの費用がある月は、比べる月から外す
  • 在庫を反映していない月の数字は使わない
  • 計算結果は目安として使い、最後は実際の取引の中身で確かめる

賞与や年払いの費用を月ごとにならし、月ごとの数字を比べやすくする方法は、月次決算のやり方|中小企業が翌月に数字を使うための4つの手順と確認表で紹介しています。

分け方は、毎月同じルールで使い続ける

固変分解で最も大切なのは、一度決めた分け方を毎月同じように使い続けることです。月によって分け方が変わると、限界利益率が上がった理由が、商売の変化なのか、分け方の変化なのか分からなくなります。

決めた分け方は、科目ごとに「変動費」「固定費」「変動する部分の割合」を一覧にして残しておきます。見直すのは、次のような場面に限ります。

見直す場面例
取引の形が変わったとき外注していた作業を社内で行うようになった、歩合給を始めた
新しい科目を使い始めたとき新しい事業を始め、これまでなかった費用が出てきた
年に1回の振り返り決算の後に、分け方が実態と合っているかを確かめる

分け方を見直した場合は、比べる前年の数字も同じ分け方に直してから比べます。

当事務所の場合

奈須大貴公認会計士・税理士事務所では、公認会計士・税理士の奈須大貴が直接対応します。顧問契約では月次決算を行い、毎月の試算表をもとに、売上や利益が計画どおりか、利益率が下がっていないか、固定費が増えていないかを、経営者と一緒に確認しています。

費用を変動費と固定費に分ける作業は、業種や取引の形によって判断が分かれるところです。当事務所では、会社ごとの取引の中身を確かめたうえで分け方を決め、限界利益や損益分岐点を使って、値上げや採用、設備投資を数字で考える財務コンサルの支援も行っています。年間の利益と納税額は、第2四半期頃から見通しを立て、第3四半期で精度を高めて決算に備えます。

一方で、「決算と申告だけを、できるだけ安く依頼したい」という場合には、当事務所は合わない可能性があります。支援の内容は、税務顧問サービスのページでご案内しています。

自社の費用を分けてみたい方へ

固変分解は、勘定科目ごとに変動費か固定費かを決め、迷う科目だけ12か月の数字で確かめる手順で進めると、無理なく続けられます。まずは直近の試算表を開き、この記事の表に沿って科目を2つに分けてみてください。

「外注費や人件費の分け方に迷っている」「分けた後の数字を、値上げや採用の判断にどう使えばよいか知りたい」という方は、直近の試算表や決算書をもとに状況をお聞かせください。今の税理士に伝える前の段階でも相談でき、相談しただけで今の顧問契約を終える必要はありません。福岡市南区大橋を拠点に、福岡市と春日市・大野城市・那珂川市・太宰府市・筑紫野市などの近郊に対応しており、オンラインでの面談も可能です。


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