「会社を作ったら、自宅の家賃を経費にできると聞いた」
「役員社宅にすると節税になるらしいけど、家賃の半分は自分で払わないといけない?」
福岡市南区大橋を拠点に税務相談をお受けしていると、一人法人や中小企業の経営者の方から、このようなご相談をいただくことがあります。
結論からいうと、役員社宅制度を正しく利用すれば、役員が住む住宅の家賃の一部を会社が負担することは可能です。
ただし、個人名義で借りている自宅の家賃を、そのまま会社から支払えばよいわけではありません。また、「役員は家賃の50%を自己負担すればいい」という話も、すべての住宅に当てはまるわけではありません。
役員社宅を検討するときに大切なのは、
・会社名義で住宅を借りる
・税務上必要な自己負担額を計算する
・毎月きちんと役員から家賃を徴収する
・法人契約への変更費用まで含めて、本当にメリットがあるか確認する
という順番です。
この記事では、役員社宅でなぜ節税につながるのか、役員はいくら家賃を負担すればよいのか、現在の自宅が個人契約の場合はどうすればよいのかまで、福岡市南区大橋にある公認会計士・税理士事務所の視点から、できるだけ分かりやすく解説します。
そもそも役員社宅とは?
役員社宅とは、会社が住宅を役員に貸し出す仕組みです。
賃貸マンションであれば、基本的な流れは次のようになります。
会社が大家・管理会社と賃貸借契約を結ぶ
↓
会社が家賃を支払う
↓
役員が会社へ一定額の社宅家賃を支払う
↓
残りを会社が負担する
税務上、役員から一定額以上の家賃を受け取っていれば、会社が負担した部分について、原則として役員への給与として課税されない取扱いがあります。
この役員が負担すべき一定額を「賃貸料相当額」といいます。
一人法人であっても、要件を満たせば役員社宅制度を利用することは可能です。
なぜ役員社宅が節税につながるの?
通常、自宅の家賃は役員が自分の手取りから支払います。
例えば役員報酬から所得税や住民税などが差し引かれ、その残ったお金から毎月15万円の家賃を支払っているとします。
役員社宅にすると、税務上必要な自己負担額を役員が会社へ支払い、それを超える部分を会社が負担できる可能性があります。
例えば、
実際の家賃 15万円
役員の賃貸料相当額 3万円
会社の実質負担額 12万円
というイメージです。
ただし、この12万円がそのまま「節税額」になるわけではありません。
会社の税負担、役員個人の税負担、役員報酬の設定、社会保険などによって実際の効果は変わります。
そのため、「家賃を経費にできるから得」と考えるのではなく、会社と個人を合わせた手残りがどう変わるのかを見ることが大切です。
家賃の50%を自己負担する必要はない?
役員社宅について調べると、「家賃の50%を役員が負担すれば大丈夫」という説明をよく見かけます。
しかし、これはすべての役員社宅に当てはまるルールではありません。
役員社宅の賃貸料相当額は、住宅の規模によって計算方法が異なります。
特に一般的なマンションなどが該当しやすい「小規模な住宅」の場合、実際の家賃の50%ではなく、固定資産税の課税標準額などを使って計算します。
つまり、家賃20万円だから自己負担10万円と機械的に決める必要はありません。
反対に、根拠なく「家賃の20%くらいでいいだろう」と決めるのも避けたいところです。
まずは、その住宅について税務上必要な賃貸料相当額を計算することが重要です。
小規模な住宅なら自己負担額はどう計算する?
役員社宅が「小規模な住宅」に該当する場合、賃貸料相当額は次の3つの金額を合計して計算します。
① 建物の固定資産税の課税標準額 × 0.2%
② 12円 × 建物の総床面積 ÷ 3.3㎡
③ 敷地の固定資産税の課税標準額 × 0.22%
小規模な住宅については、
法定耐用年数30年以下の建物
→ 床面積132㎡以下
法定耐用年数30年超の建物
→ 床面積99㎡以下
という基準があります。
マンションなどの区分所有建物では、共用部分について一定の按分をした床面積も加えて判定する点にも注意が必要です。
RC造のマンションなどでは法定耐用年数が30年を超えるケースが多いため、99㎡という基準が一つのポイントになります。
実際に計算してみるとどうなる?
例えば、次のような小規模住宅を仮定します。
実際の家賃 月15万円
床面積 80㎡
建物の固定資産税の課税標準額 800万円
敷地の固定資産税の課税標準額 500万円
この場合、
① 800万円 × 0.2% = 16,000円
② 12円 × 80㎡ ÷ 3.3㎡ = 約291円
③ 500万円 × 0.22% = 11,000円
合計すると、賃貸料相当額は約27,291円です。
この例では、役員が月約27,000円以上を会社へ支払い、残りの約12万3,000円を会社が負担する形を検討できます。
家賃15万円の50%である75,000円とは大きく違います。
もちろん、これはあくまで仮定の数字です。
実際の賃貸料相当額は、物件ごとの固定資産税の課税標準額などによって変わります。
「家賃の何%」ではなく、実際に計算して判断することが大切です。
小規模住宅ではない場合は「家賃50%」が出てくる
では、「家賃の50%」という話はどこから出てくるのでしょうか。
小規模住宅に該当しない住宅を会社が他から借りて役員へ貸す場合、賃貸料相当額は、以下の2つのうち、いずれか多い金額となります。
(1)会社が家主へ支払う家賃の50%
(2)固定資産税の課税標準額から所定の方法で計算した金額
つまり、50%という数字は、すべての役員社宅に共通する自己負担割合ではありません。
ここを混同すると、本来必要な金額よりも役員負担を大きくしてしまう可能性があります。
個人名義で借りている自宅をそのまま会社経費にできる?
ここも非常に多い質問です。
現在、社長個人の名義でマンションを借りている場合、その契約のまま会社が家賃を負担しても、原則として税務上の「社宅の貸与」とは扱われません。
そのため、現在住んでいる自宅を役員社宅にしたい場合には、まず大家さんや管理会社へ相談して、個人契約から法人契約への変更が可能か確認する必要があります。
単に家賃の引落口座を法人口座へ変更すればよい、という話ではありません。
福岡市南区大橋周辺でも賃貸マンションは多いですが、法人契約への変更ができるか、再契約が必要になるかは物件や管理会社によって異なります。
役員社宅を検討する場合は、税務上の計算だけでなく、まず現在の賃貸借契約を確認しておきましょう。
個人契約から法人契約へ変えるなら「初期費用」まで確認する
ここは、役員社宅を紹介する記事で意外と見落とされやすいところです。
現在住んでいる住宅を個人契約から法人契約へ変更すると、管理会社や保証会社によっては再契約扱いになることがあります。
その場合、
・契約事務手数料
・仲介手数料
・保証会社の費用
・礼金
・敷金や保証金の追加
・火災保険の変更
などが発生する可能性があります。
例えば、社宅制度を導入することで毎月3万円のメリットが見込める一方、法人契約への変更に18万円かかるのであれば、単純計算では初期費用を回収するまで6か月かかります。
さらに、近いうちに引っ越す予定であれば、現在の住宅をわざわざ法人契約へ変更しない方が合理的な場合もあります。
「節税できるか」だけを見るのではなく、
年間でどれだけ効果があるのか
初期費用はいくらかかるのか
何か月住めば元が取れるのか
まで考えて判断することが大切です。
節税のために不要な支出を増やしてしまっては、本末転倒です。
固定資産税の課税標準額はどうやって調べる?
小規模住宅の賃貸料相当額を計算するときに、多くの方がつまずくのが「固定資産税の課税標準額」です。
必要になるのは、建物と敷地の固定資産税の課税標準額です。
賃貸マンションの場合、自分が物件の所有者ではないため、「そんな数字、どうやって調べるの?」と思う方も多いでしょう。
まずは、大家さんや管理会社へ確認する方法があります。
それでも確認できない場合には、市区町村の固定資産課税台帳などから確認する方法を検討します。
福岡市では、一定の要件を満たす借家人について、固定資産課税台帳の閲覧や証明書の請求ができる取扱いがあります。
福岡市南区大橋周辺の賃貸マンションで役員社宅を検討している場合も、こうした資料を使って賃貸料相当額を計算することになります。
必要書類は契約状況などによって異なることがあるため、実際に取得する際は事前に確認しておくとスムーズです。
「社宅規程がないと絶対ダメ」ではないが、作っておきたい
役員社宅について検索すると、「社宅規程がなければ認められない」という説明を見かけることがあります。
税務上のポイントは、住宅を会社が貸与し、役員から必要な賃貸料相当額以上を受け取っているかどうかです。
社宅規程そのものが、役員社宅を利用するための絶対的な条件というわけではありません。
とはいえ、実務上は役員社宅規程を作っておくことをおすすめします。
例えば、
対象となる役員
社宅使用料の計算方法
家賃の徴収方法
水道光熱費等の負担
退去時の取扱い
などを決めておけば、会社としてどのようなルールで社宅を貸しているのか説明しやすくなります。
特に一人法人では、会社と社長個人のお金が曖昧になりやすいため、ルールを残しておく意味は大きいです。
社宅使用料は給与天引きでないとダメ?
給与天引きにする方法は分かりやすいですが、必ず給与天引きでなければならないというわけではありません。
重要なのは、計算した賃貸料相当額以上を、実際に役員から会社が受け取っていることです。
給与から控除する方法でも、役員から会社へ振り込む方法でも、毎月の徴収が確認できる形にしておきましょう。
帳簿上だけ徴収したことにするのではなく、実際のお金の動きも合わせて管理しておくことが大切です。
役員報酬を下げないと社宅制度は使えない?
これも誤解されやすいポイントです。
役員社宅を利用するために、必ず役員報酬を減額しなければならないわけではありません。
ただし、会社と役員を合わせた手残りを考えた結果、社宅制度の導入と一緒に役員報酬の見直しを検討することはあります。
その場合に注意したいのが、役員給与の「定期同額給与」です。
役員報酬は好きなタイミングで自由に変更できるわけではありません。
「社宅にしたから、来月から役員報酬を10万円下げよう」
と単純に進めるのではなく、決算月や役員報酬の改定時期も確認しながら設計する必要があります。
社宅だけを単独で考えるのではなく、役員報酬や会社全体の資金繰りも含めて考えることが重要です。
注意|所得税と社会保険では社宅のルールが違う
役員社宅を検討するときには、税金だけではなく社会保険にも注意が必要です。
税務上の「賃貸料相当額」と、社会保険上の「住宅の現物給与価額」は同じものではありません。
そのため、税務上、給与課税されない社宅だから、社会保険料にも何も影響しないとは限りません。
会社と個人を合わせた手残りを考えるのであれば、税務上の取扱いだけではなく、社会保険上の取扱いも確認しておきたいところです。
特に役員報酬の見直しと社宅制度を同時に検討する場合は、両方を分けて確認することが重要です。
役員社宅を検討する場合のチェックリスト
役員社宅を導入するなら、少なくとも次の項目を確認しておきましょう。
・現在の賃貸契約は個人名義か法人名義か
・法人契約への変更は可能か
・変更時にいくら費用がかかるか
・建物の構造、法定耐用年数、床面積はどうなっているか
・小規模住宅に該当するか
・固定資産税の課税標準額を取得できるか
・役員の賃貸料相当額はいくらになるか
・毎月どのように社宅使用料を徴収するか
・社宅規程等を整備するか
・役員報酬を変更する必要があるか
・社会保険上の取扱いはどうなるか
・初期費用を何か月で回収できるか
福岡市南区大橋周辺で現在住んでいる賃貸マンションを社宅にしたい場合も、基本的にはこの順番で整理していけば判断しやすくなります。
制度として利用できるかだけではなく、本当に導入するメリットがあるのかまで確認することが大切です。
役員社宅は「家賃を経費にする裏技」ではない
役員社宅制度は、正しく使えば非常に有効な制度です。
特に毎月の家賃は金額が大きいため、一人法人や中小企業の経営者にとって、会社と個人のお金の使い方を見直すきっかけになります。
ただし、
家賃の50%を払えばいい
会社名義にすれば全部経費になる
役員報酬を下げればその分すべて得になる
といった単純な話ではありません。
住宅の規模、固定資産税の課税標準額、現在の契約状況、役員報酬、社会保険、法人契約への変更費用などをまとめて考える必要があります。
節税策を考えるときに大切なのは、「いくら経費を増やせるか」だけではありません。
社宅制度を導入するために余計な費用を支払ったり、会社の資金繰りを悪化させたりしては意味がありません。
会社と経営者を合わせた手残りを増やしながら、税務上も説明できる形を作る。
役員社宅も、そのための選択肢の一つです。
役員社宅や節税について相談したい方へ
奈須大貴公認会計士・税理士事務所は、福岡市南区大橋を拠点に、福岡市内・福岡県内の一人法人や中小企業の経営者の方から、役員社宅をはじめ、役員報酬や会社と個人のお金の分け方、節税についてのご相談をお受けしています。
「今住んでいるマンションを社宅にできるのか」
「家賃の50%ではなく、実際の自己負担額を計算したい」
「法人名義への変更費用まで含めて、本当に得なのか知りたい」
「賃貸マンションでも社宅制度を使えるのか相談したい」
といった場合には、家賃や間取り、契約状況などを確認しながら、
法人契約への変更費用
役員が負担すべき賃貸料相当額
毎月の会社負担額
年間の効果
初期費用の回収期間
まで整理したうえで、役員社宅を導入するメリットがあるか一緒に検討します。
福岡市南区大橋周辺で税理士をお探しの方や、役員社宅制度・節税について具体的に相談したい方は、お気軽にお問い合わせください。
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