2026年福岡県の最低賃金は1,114円へ|人件費増で必要な売上はいくら?福岡市の税理士・公認会計士が解説

福岡県の最低賃金は、2026年10月4日から1時間1,114円に引き上げられます。現在の1,057円から57円の引き上げです。

「57円上がるだけか」と思うかもしれません。しかし、経営者の立場から考えると、確認したいのは最低賃金そのものだけではありません。人件費が年間でいくら増えるのか、その増加分をカバーするためには売上をいくら増やす必要があるのか。ここまで数字に置き換えて考えることが大切です。

この記事では、福岡県の最低賃金引き上げについて、具体的な数字を使いながら経営への影響を解説します。

福岡県の最低賃金は2026年10月4日から1,114円へ

福岡県の最低賃金は、2026年10月4日から1時間1,114円となります。現在の1,057円から57円の引き上げです。

最低賃金は、原則として福岡県内の事業場で働くすべての労働者に適用されます。正社員だけではなく、パートやアルバイトなども対象です。そのため、飲食店、小売店、美容室、宿泊業、サービス業など、パート・アルバイトを多く雇用している事業者にとっては特に影響が大きくなります。

なお、業種によっては地域別最低賃金とは別に「特定最低賃金」が定められている場合があります。実際の賃金を確認する際には、自社に適用される最低賃金を確認する必要があります。

57円の引き上げで、人件費はいくら増える?

例えば、最低賃金で働くアルバイトを5人雇用していて、1人あたり月100時間勤務しているとします。

57円 × 100時間 × 5人 = 月28,500円

単純計算では、毎月28,500円の人件費増加です。年間では342,000円になります。

「年間34万円くらいなら大丈夫」と思うかもしれません。しかし、経営者として考えたいのはここからです。

売上を34万円増やせばいいわけではない

人件費が年間342,000円増えるからといって、「売上も342,000円増やせば元に戻る」というわけではありません。売上が増えれば、それに伴って材料費や仕入などの変動費も増えるからです。

例えば、売上100万円に対して、材料費や仕入などの変動費が60万円、残りの40万円が固定費の支払いや利益に使える会社があったとします。この会社の限界利益率は40%です。

年間342,000円の人件費増加をカバーするために必要な売上は、

342,000円 ÷ 40% = 855,000円

となります。

つまり、人件費の増加は約34万円でも、同じ利益を確保するためには約85万5,000円の売上増加が必要になります。

ここが重要です。最低賃金が上がったときには、「人件費がいくら増えるか」だけではなく、「その増加分をカバーするには売上をいくら増やす必要があるか」まで考える必要があります。

最低賃金が上がると損益分岐点も上がる

会社には、「これ以上売上が下がると赤字になる」というラインがあります。いわゆる損益分岐点です。

人件費などの固定費が増えれば、この損益分岐点も上がります。これまで月商500万円あれば一定の利益が出ていた会社でも、人件費が増えれば、同じ500万円の売上でも以前より利益は少なくなります。

場合によっては、「売上は前年とほとんど変わっていないのに、利益が減った」ということも起こります。だからこそ、「最低賃金が上がったので給与を変更して終わり」ではなく、会社全体の利益への影響まで確認しておく必要があります。

最低賃金の引き上げで確認したい5つの数字

最低賃金が引き上げられる場合には、少なくとも次の5つの数字を確認しておきたいところです。

1.対象となる従業員数

まず、最低賃金の引き上げによって給与を変更する必要がある従業員が何人いるのかを確認します。最低賃金付近の従業員が多い会社ほど、影響額は大きくなります。

2.1人あたりの勤務時間

同じ57円の引き上げでも、月50時間勤務する人と月150時間勤務する人では影響額が大きく異なります。従業員数だけではなく、実際の勤務時間まで確認することが必要です。

3.年間の人件費増加額

対象となる従業員数と勤務時間をもとに、年間でどの程度人件費が増えるのかを計算します。月単位では小さく見えても、年間で計算すると想像以上の金額になる場合があります。

4.限界利益率

人件費増加分をカバーするために必要な売上を計算するには、限界利益率を確認する必要があります。限界利益率が低い会社ほど、同じ人件費増加額をカバーするために必要となる売上は大きくなります。

5.人件費増加後の損益分岐点売上高

最後に、人件費が増えた後に「月商いくらあれば赤字にならないのか」を確認します。最低賃金の変更前と変更後の損益分岐点を比較すると、経営への影響が分かりやすくなります。

時給以外の人件費にも影響する可能性がある

最低賃金の引き上げによる影響は、単純な時給差額だけとは限りません。給与が増加することで、従業員の労働時間や社会保険の加入状況などによっては、会社が負担する社会保険料や労働保険料などに影響する場合があります。

また、最低賃金付近の従業員だけ給与を上げることで、新人と経験者との給与差が小さくなることもあります。その場合には、最低賃金の対象者だけではなく、会社全体の給与体系を見直す必要が出てくるかもしれません。

そのため、最低賃金引き上げによる影響を確認するときには、「57円×勤務時間」だけではなく、会社全体の人件費がどう変わるかまで見ておくことが大切です。

「売上を増やす」以外の方法もある

もちろん、「人件費が増えたから売上を増やそう」だけが答えではありません。

商品の価格を見直す、利益率の低い商品を見直す、仕入価格を見直す、人員配置やシフトを見直す、業務を効率化する。こうした方法でも利益を改善することはできます。

大切なのは、「最低賃金が57円上がる」というニュースを見て終わるのではなく、「自社の利益にいくら影響するのか」を数字に置き換え、そのうえで必要な対策を考えることです。

値上げを検討するきっかけにもなる

最低賃金だけではなく、仕入価格や光熱費など、さまざまなコストが上昇しています。その結果、「売上は増えているのに利益が増えない」という会社もあります。

このような場合には、価格設定そのものを見直す必要があるかもしれません。単純に「コストが100万円増えたから売上も100万円増やせばいい」と考えるのではなく、自社の限界利益率や販売数量を確認しながら、どの商品をいくら値上げすれば利益を維持できるのかを考えることが重要です。

最低賃金の引き上げは、自社の商品価格やサービス価格を見直す一つのきっかけにもなります。

最低賃金の引き上げを機に月次の数字を確認する

最低賃金の引き上げは、多くの会社に影響します。ただし、その影響額は会社によって全く違います。

従業員数、勤務時間、現在の給与水準、限界利益率、固定費。こうした数字によって、必要となる対策も変わります。

だからこそ、「最低賃金が上がるらしい」で終わらせず、「うちの会社の場合はいくら影響するのか」まで確認してみてください。毎月会社の数字を確認できていれば、人件費が増えた結果、利益がどう変わったのか、値上げによって利益率が改善したのか、今後どのくらいの売上が必要なのかといった判断もしやすくなります。

まとめ|最低賃金は「57円」ではなく経営への影響額で考える

2026年10月4日から、福岡県の最低賃金は1時間1,114円となります。現在の1,057円から57円の引き上げです。

例えば、最低賃金で働くアルバイト5人が月100時間勤務するケースでは、年間の人件費増加額は342,000円です。さらに、限界利益率が40%であれば、その人件費増加をカバーするためには約855,000円の売上増加が必要になります。

最低賃金の引き上げを機に、年間の人件費増加額、限界利益率、損益分岐点、必要な売上、価格設定まで一度確認してみてはいかがでしょうか。

人件費の増加が経営に与える影響を確認したい方へ

奈須大貴公認会計士・税理士事務所では、税金の計算だけではなく、月次の数字をもとに利益や資金繰りを確認し、経営判断に活かすためのサポートを行っています。

「人件費が上がった場合、年間の利益はいくら減るのか」「利益を維持するためには売上をいくら増やす必要があるのか」「今の価格設定で十分な利益を確保できているのか」「今年の利益や納税額はどのくらいになりそうなのか」といった数字を一緒に確認しながら、経営に活かしていきます。

「売上はあるのに、なぜかお金が残らない」「人件費が増えて、このままで大丈夫なのか不安」という経営者の方は、お気軽にご相談ください。


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