確定申告の税理士費用はどう決まる?丸投げか自分で入力かなど、料金が変わる6つの要因と準備で抑える方法

確定申告を税理士に頼む費用は、取引の量と、帳簿をどこまで自分で付けているかで大きく変わります。税理士の報酬は、申告書を1枚作ることへの対価というより、1年分の取引を確かめて申告書にまとめるまでの作業の量で決まるためです。同じ売上の個人事業主でも、毎月会計ソフトに入力している人と、通帳と領収書をまとめて渡す人とでは、税理士の作業は数倍違うことがあります。

この記事では、公認会計士・税理士の奈須大貴が、確定申告の税理士費用が変わる6つの要因と、依頼する側の準備で費用を抑える方法、確定申告だけを頼むスポットと、毎月の顧問の違いを解説します。

確定申告の税理士費用は「作業の量」で決まる

税理士事務所のホームページには、売上の規模ごとの料金表がよく載っています。料金表は目安として役に立ちますが、実際の見積もりは、売上の金額そのものより、申告書ができるまでにどれだけの作業が必要かで決まります。

確定申告を依頼したときに税理士が行う作業は、おおむね次の4つです。

作業内容作業の量を左右するもの
記帳通帳、カードの明細、領収書から1年分の取引を会計ソフトに入力する取引の件数と、すでに入力されているかどうか
確認入力された取引の内容、経費になるかどうか、家庭と事業の按分を確かめる不明な取引の数と、質問への回答の早さ
申告書の作成決算書(青色申告決算書・収支内訳書)と申告書を作る青色か白色か、消費税の申告があるか、ほかの所得があるか
説明と提出所得と税額を説明し、電子申告で提出する内容の複雑さ

このうち、依頼する人によって差が最も大きく出るのが記帳と確認です。申告書の作成と提出は、どの依頼でも一定の作業がありますが、記帳と確認は、ゼロに近い人から何十時間もかかる人まで幅があります。費用の話は、まずこの2つの作業がどれだけあるかを知ることから始まります。

費用が変わる6つの要因

確定申告の税理士費用を左右する要因を6つに分けると、次のようになります。

要因作業が増える状態作業が減る状態
1. 取引の量通帳・カード・現金の取引が多く、取引先も多い取引が少なく、入出金が1つの口座に集まっている
2. 記帳の状態何も入力しておらず、資料をまとめて渡す(丸投げ)毎月、会計ソフトに自分で入力している
3. 青色か白色か青色申告で65万円・55万円の控除を受ける(貸借対照表まで作る)白色申告で、収支内訳書を作る
4. 消費税の申告消費税の申告があり、一般課税で計算する消費税の申告がない
5. 資料の渡し方紙の領収書を袋に入れて渡す、資料が何度にも分かれて届く明細をデータで渡す、会計ソフトを共有する
6. 依頼の時期2月下旬から3月に初めて相談する年内から1月中に相談し、資料を1月中に渡す

1. 取引の量

取引の量は、売上の金額よりも件数で考えると分かりやすくなります。たとえば、売上が同じ1,000万円でも、1社から毎月入金がある人と、毎月何十件もの小口の入金がある人とでは、確かめる件数がまったく違います。

仮の数字で、1年間の取引の件数を数えてみます。

資料1か月の件数(仮)1年間の件数
事業用の通帳の入出金60件720件
クレジットカードの利用40件480件
現金で払った経費のレシート20件240件
合計120件1,440件

この例では、税理士は1年間で1,440件の取引を入力するか、入力されたものを確かめることになります。見積もりを依頼するときに「売上はいくらか」だけでなく「月にどれくらいの取引があるか」を伝えると、見積もりの精度が上がります。

2. 記帳の状態(丸投げか、自分で入力か)

費用に最も大きく影響するのが、記帳を誰が行うかです。資料をまとめて渡し、記帳から税理士に任せる形は、いわゆる「丸投げ」と呼ばれます。丸投げでも申告はできますが、記帳の作業がすべて税理士の側に移るため、その分の作業が費用に乗ります。

上の1,440件の例で、記帳の状態によって税理士の作業時間がどう変わるかを、仮の数字で比べると次のようになります。

同じ取引の量でも、記帳の状態で変わる作業時間(仮の数字)

毎月自分で入力している場合は、税理士は入力の内容を確かめて申告書を作るだけで済みます。年末にまとめて入力している場合は、入力の誤りや不明な取引が増えるため、確認の時間が延びます。入力をしていない場合は、記帳そのものが作業に加わり、紙の領収書の束を渡す場合は、仕分けと読み取りの時間がさらに加わります。

自分で入力する形に移るときは、いきなりすべてを自分で行う必要はありません。通帳とカードの明細を会計ソフトに取り込むところだけ自分で行い、勘定科目の確認は税理士に任せる、という分け方もできます。

3. 青色申告か白色申告か

青色申告で65万円または55万円の青色申告特別控除を受けるには、正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)で記帳し、貸借対照表と損益計算書を申告書に添付する必要があります。65万円の控除は、これに加えて電子申告(e-Tax)で提出するか、優良な電子帳簿の要件を満たして帳簿を保存することが条件です(国税庁「No.2072 青色申告特別控除」)。

白色申告で作る収支内訳書は、損益の内訳を書く書類で、貸借対照表はいりません。そのため、作業の量だけで見ると白色申告のほうが少なくなります。ただし、青色申告の控除による税金の差は、作業の差による費用の差より大きくなることが多いため、費用を理由に白色申告を選ぶのはおすすめしません。青色申告の承認を受けていない場合は、青色申告をしようとする年の3月15日までに承認申請書を出す必要があります(国税庁「No.2070 青色申告制度」)。

4. 消費税の申告があるか

インボイスの登録をしている場合や、2年前の課税売上高が1,000万円を超えている場合は、所得税とは別に消費税の申告が必要です。消費税の申告があると、取引ごとに消費税がかかるかどうかの区分を確かめ、消費税の申告書を作る作業が加わります。

作業の量は、計算の方法でも変わります。一般課税では、経費の一つひとつについて消費税の区分とインボイスの有無を確かめます。簡易課税や2割特例では、売上の消費税から計算するため、経費側の確認は軽くなります。

5. 資料の渡し方

同じ資料でも、渡し方によって税理士の作業は変わります。紙のレシートを1年分まとめて袋に入れて渡すと、税理士の側で日付順に並べ、読み取り、入力する作業が発生します。通帳やカードの明細をデータで渡せば、会計ソフトに取り込めるため、入力の手間が大きく減ります。

資料が何度にも分かれて届く場合も、作業は増えます。途中まで進めた入力を、後から届いた資料で直す必要が出るためです。何を渡すかの一覧は、確定申告を税理士に依頼するなら、いつまでに何を渡す?にまとめています。

6. 依頼の時期

確定申告の期限は原則として3月15日で、税理士事務所にとって2月から3月は一年で最も忙しい時期です。この時期に初めて相談すると、受付を締め切っている事務所があったり、短い日数で仕上げる急ぎの依頼として扱われたりすることがあります。

依頼の時期は、費用だけでなく申告の質にも関わります。日数に余裕がないと、不明な取引を確かめる時間や、家事按分の根拠を一緒に考える時間が取れません。年内から1月中に相談し、資料を1月中に渡せば、税理士の作業も依頼する側の回答も落ち着いて進められます。

「丸投げ」で頼むときに知っておきたいこと

忙しくて記帳まで手が回らない場合、丸投げで頼むのは現実的な選択です。ただし、丸投げでも依頼する側にしかできないことが残ります。

  1. 通帳の入出金のうち、何の取引か分からないものについて、税理士からの質問に答える
  2. 自宅の家賃や車、通信費など、家庭と事業で共用している費用の割合と、その根拠を決める
  3. 現金で受け取った売上や、現金で払った経費を、記録やメモで示す
  4. できあがった申告書の所得と税額を確かめ、納付の準備をする

確定申告は、税理士が作成を手伝う場合でも、申告するのは本人です。丸投げは「記帳の作業を任せる」ことであって、「中身の判断をすべて任せる」ことではありません。とくに家事按分は、事業にどれだけ使っているかを知っているのが本人だけのため、税理士が勝手に決めることはできません。

丸投げで頼む場合でも、取引のメモを残すだけで費用と手間は変わります。通帳の明細に取引の相手や内容を一言書き込んでおく、現金の支払いはレシートの裏に用途を書いておく、といった準備で、税理士からの質問は大きく減ります。

準備で費用を抑える方法

確定申告の費用を抑えるために、依頼する側ができることを、効果の大きい順に並べます。

  1. 事業用の口座とクレジットカードを1つずつに決め、事業の入出金をそこに集める
  2. 通帳とカードの明細を、紙ではなくデータで渡せるようにする
  3. 会計ソフトに明細を取り込むところまでは、自分で行う
  4. 現金の取引を減らし、残るものはレシートに用途を書く
  5. 家事按分の割合と根拠を、年の初めに決めて残しておく
  6. 年内から1月中に相談し、資料は1回でまとめて渡す

1つ目と2つ目は、一度整えれば翌年からも効き続けます。事業用の口座とカードに入出金が集まっていれば、税理士は家庭の支払いと事業の支払いを1件ずつ分ける必要がなくなり、確認の作業が減ります。

一方で、費用を抑えようとして、必要な資料を渡さなかったり、確認の質問を後回しにしたりするのは逆効果です。確かめられない経費は申告に入れられず、結果として税金が増えることがあります。費用を抑える工夫は、税理士の作業を減らすための準備に向けるのが確実です。

見積もりを依頼するときに伝えること

確定申告の見積もりを正確に受け取るには、最初の相談で次のことを伝えると話が早く進みます。

伝えること例
事業の内容と、始めた時期内装工事の一人親方、開業3年目
売上の規模と、取引先の数売上は約800万円、取引先は5社
1か月の取引の件数の目安通帳とカードで月に100件ほど
記帳の状態会計ソフトに明細を取り込んでいるが、科目は確かめていない
青色か白色か青色申告の承認を受けている
消費税の申告インボイスの登録をしている
資料の渡し方通帳とカードの明細はデータで出せる。レシートは紙
給与や不動産など、ほかの所得なし

これらが分かれば、税理士はどの作業がどれだけ必要かを見積もれます。逆に、売上の金額だけで見積もりを受け取ると、資料を受け取った後で作業が想定より多いと分かり、金額が変わることがあります。

スポットで頼むか、顧問で頼むか

確定申告の依頼の形には、確定申告だけを1回ごとに頼むスポットと、毎月の記帳の確認や相談を含めて継続して頼む顧問の2つがあります。

項目確定申告だけのスポット毎月の顧問
税理士が数字を見る時期年が明けて資料を受け取った後毎月
所得と税額が分かる時期2月から3月年の途中から見通しが立つ
年の途中の相談原則として依頼の範囲外契約の範囲で相談できる
記帳の誤りに気づく時期申告の直前その月か翌月
費用の考え方1回の申告の作業の量で決まる毎月の作業と相談、申告をまとめて決まる
向いている人取引が少なく、年の途中の相談がほとんどない売上が伸びていて、消費税や法人化の判断が近い

スポットは、確定申告の時期だけ費用がかかるため、1年の支払いとしては抑えやすい形です。その代わり、所得と税額が分かるのは申告の直前になり、納付の資金の準備や、青色申告・消費税・法人化の判断が後手になりがちです。

顧問は毎月の費用がかかりますが、毎月の試算表で所得の見込みが分かり、年の途中で税金の準備や判断ができます。毎月の記帳が整っていれば、確定申告の時期にまとめて資料を集める作業もなくなります。最初の年はスポットで依頼し、翌年から顧問に切り替えるという進め方もあります。依頼の形の違いは、個人事業主・フリーランスが税理士と初めて契約する時に知っておきたいことでも紹介しています。

当事務所の場合

奈須大貴公認会計士・税理士事務所では、公認会計士・税理士の奈須大貴が直接対応し、個人事業主の確定申告のご依頼をお受けしています。最初の相談で、事業の内容、取引の量、記帳の状態、消費税の申告の有無をお聞きし、必要な作業と報酬をご案内します。報酬は、売上や取引の量、資料のそろい具合、記帳の状態、消費税の申告の有無で変わります。

確定申告を1回の依頼として進めた後に、毎月の記帳と数字の確認を続ける顧問の形に切り替えることもできます。顧問の形にすると、毎月の試算表で売上と経費が分かり、年の途中で所得税の見通しを立てたり、青色申告や消費税、法人にするかどうかの判断を数字で考えたりできるようになります。

一方で、「申告書の作成だけを、できるだけ安く依頼したい」という場合には、当事務所は合わない可能性があります。顧問契約での支援内容は、税務顧問サービスのページでご案内しています。

確定申告の税理士費用を確かめたい方へ

確定申告の税理士費用は、取引の量、記帳の状態、青色か白色か、消費税の申告の有無、資料の渡し方、依頼の時期で変わります。まずは、事業用の通帳とカードの明細から1か月の取引の件数を数え、記帳がどこまで進んでいるかを確かめてみてください。それだけで、見積もりを依頼するときに伝える内容がそろいます。

「自分の場合はどれくらいの作業になるか知りたい」「丸投げと自分で入力する形のどちらがよいか迷っている」という方は、手元の資料と記帳の状態をお聞きしたうえで、依頼の範囲と準備を一緒に整理します。福岡市南区大橋を拠点に、福岡市全域と近郊の個人事業主のご相談をお受けしており、オンラインでの面談にも対応しています。


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