経理の仕事とは?AI時代でも求められる“経営を支える力”

AIが仕訳を自動化しても、経理の本質はなくなりません。経理は経営管理の中核であり、会社の意思決定を支える存在です。本記事では、公認会計士・税理士が実務の視点から、AI時代に生き残る経理の役割と管理会計の重要性を詳しく解説します。

経理の本質は「経営管理」にある

経理と聞くと「帳簿をつける人」「伝票を処理する仕事」と思われがちです。
しかし、本来の経理は経営管理の一部であり、単なる事務作業ではありません。

経理の役割は、企業のあらゆる取引を数値化し、経営者が意思決定できる情報に整理することにあります。

たとえば、

  • どの事業が最も利益を生んでいるのか
  • コスト構造のどこに課題があるのか
  • 資金繰りは健全に回っているのか

これらを把握するための“正しい数字”をつくるのが経理です。
つまり経理は、会社の「健康診断書」をつくる医師のような存在。
数字を通じて経営の体調を管理するのが、経理の本質です。

AIで代替できるのは「処理」だけ

AIやクラウド会計ソフトの発展により、経理業務は大きく変わりつつあります。
仕訳入力やレシートの自動読取などは、AIが得意とする領域です。

しかし、AIができるのは“記録”まで。
AIは数字を整理できますが、その数字をどう読み解き、どう経営に活かすかまでは判断できません。

たとえば、

  • 原価率が上昇した背景は?
  • どの事業が最もキャッシュを生み出している?
  • 固定費が増えたことで来期の利益にどう影響する?

こうした分析は、数字の意味を理解できる人間にしかできない領域です。
AIが生み出した数字を「経営の武器」に変えられるのが、これからの経理人材の価値といえます。

管理会計ができる経理が、企業を強くする

これからの時代、経理に求められるのは「管理会計(マネジメント・アカウンティング)」の視点です。
管理会計とは、財務諸表を作るための会計ではなく、経営判断に活かすための会計のこと。

管理会計を導入することで、経営者は過去の数字を見るだけでなく、未来を設計できるようになります。

主な管理会計の視点は次の通りです。

  • 事業・商品・部門ごとの採算を分析する
  • 損益分岐点を把握して、売上目標を設定する
  • 固定費と変動費のバランスを見直す
  • 投資・人件費を最適に配分する

これらの情報があれば、「どの事業に力を入れるべきか」「どこを改善すべきか」が明確になります。
経理がこの分析を担えば、経営者の右腕として企業を大きく前進させることができます。

中小企業こそ“管理会計”が武器になる

「うちは小さい会社だからそんな立派な会計は必要ない」と感じる経営者も多いでしょう。
しかし、実は中小企業こそ管理会計を取り入れるべきです。

なぜなら、数字を見ずに意思決定をすると、感覚での判断に偏ってしまうからです。

たとえば、

  • 利益が出ているのにお金が残らない
  • 広告費を増やしたのに売上が伸びない
  • 原価を下げたはずなのに利益率が上がらない

これらの課題は、すべて“数字の構造”を見れば説明がつきます。
経理が日々の数字を整理し、正しく分析できれば、感覚ではなく「事実」で経営判断ができるようになります。

そして、中小企業の場合、日々の会計データをそのまま管理会計に活用できるため、大企業よりもスピーディーに導入できるというメリットもあります。

管理会計を始めるための3ステップ

「うちも管理会計をやってみたいけど、何から始めればいいの?」
そんな方は、まずこの3つのステップから始めてみましょう。

  1. 固定費と変動費を分けてみる
     経費の中身を「固定費」と「変動費」に分けることで、会社が黒字になるための“損益分岐点”が見えてきます。
     たとえば、毎月どれだけの売上があれば利益が出るのか。
     このラインを知ることが、経営の第一歩です。
  2. 毎月の損益を整理する(月次決算)
     損益分岐点を理解したら、次は毎月の売上・経費・利益を整理しましょう。
     数字をタイムリーに把握することで、問題を早期に発見できるようになります。
     月次決算を行うだけでも、経営の精度が大きく変わります。
  3. 部門・商品ごとに利益を見てみる
     最後に、どの事業や商品が会社を支えているのかを確認します。
     利益率の高い分野に集中投資することで、限られたリソースを最大限に活かすことができます。

経理は“過去”を見る仕事ではなく、“未来”をつくる仕事

経理というと、過去の数字をまとめるだけの印象を持つ方もいます。
しかし、本当に重要なのは「過去を整理して未来をつくる」こと。

月次決算や資金繰り表、部門別損益などの情報は、経営の未来を描くための材料です。
数字を分析し、そこから次の一手を考えることで、会社は確実に成長します。

AIがどれだけ進化しても、最終的な意思決定は経営者が行います。
そしてその判断材料を整えるのが経理。
だからこそ、経理は“裏方”ではなく“経営のパートナー”であるべきなのです。

まとめ:経理=経営のパートナー

AIの普及で経理の仕事は効率化されましたが、その重要性はむしろ高まっています。
これからの経理に求められるのは、数字を扱う力ではなく、数字で導く力です。

正しい数字をもとに、経営者と一緒に未来を描く。
これこそが、経理という仕事の本質です。

経理は、もはや裏方ではなく、経営の中心。
管理会計を理解し、経営の意思決定に貢献できる人材こそ、これからの時代に最も価値のある「経理人材」といえるでしょう。

執筆者:奈須大貴 公認会計士・税理士

福岡市を拠点に、経営に役立つ会計・税務・管理会計の情報を発信しています。
また、「数字を経営の武器に変える」をテーマに、月次決算・資金繰り・利益改善など、経営者が安心して未来を描ける体制づくりを支援しています。

数字を経営をしたいという方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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奈須大貴公認会計士・税理士事務所
所長 奈須大貴


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