【質問】 甲社は、乙社より5百万円の工事の発注を受け、請負契約書(以下「本件契約書」といいます。)を締結することとしました。手続きとしては、まず乙社が本件契約書に捺印のうえ、甲社に書面により交付することとし、次に甲社が本件契約書に捺印のうえ、その書面をスキャンし電子データ(PDF)にして乙社にメール送信する予定です。甲社は、スキャンした電子データを保存して、本件契約書の書面の廃棄を予定しています。この場合に、甲社が捺印した本件契約書は電子契約として印紙の貼付が不要となるでしょうか。
【回答】
1 法令等について
印紙税法における契約書とは、契約証書、協定書、約定書その他名称のいかんを問わず、契約(その予約を含む。)の成立若しくは更改又は契約の内容の変更若しくは補充の事実を証すべき文書をいい、念書、請書その他契約の当事者の一方のみが作成する文書又は契約の当事者の全部若しくは一部の署名を欠く文書で、当事者間の了解又は商慣習に基づき契約の成立等を証することとされているものを含むものとすることとされています(印紙税法別表1通則5)。
次に、印紙税の課税文書の作成者は、その作成した課税文書につき印紙税を納める義務があり(印紙税法3〔1〕)、その納税義務は、課税文書の作成の時に成立することとされています(通則法15〔2〕十二)。そして、印紙税法における課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいうこととされています(印紙基通44〔1〕)。また、課税文書の作成のときとは、契約当事者の意思の合致を証明する目的で作成される課税文書は、当該証明の時とされています(印紙基通44〔2〕(2))。
2 ご質問について
本件契約書は、工事の発注に伴う請負契約の内容を明らかにし、甲社と乙社の意思の合致を証明する目的で作成されるものとなります。したがって、乙社が捺印した本件契約書に甲社が捺印した段階で、契約の成立を証すべき文書として、請負契約書という課税文書が作成されたものとなります。そして、印紙税の納税義務は、課税文書の作成の時となりますので、甲社が捺印した段階で印紙税の納税義務が生じることとなります。なお、印紙税法上、電磁的記録は文書に含まれませんので、当該契約書をスキャンした電子データは課税物件には該当しません。
そうすると、契約の相手方である乙社には本件契約書をスキャンして電子データを送信するとしていても、甲社が捺印した本件契約書の納税義務の成立に影響はなく、また、本件契約書の廃棄を予定していても、一度成立した納税義務に影響を与えませんので、本件契約書には印紙の貼付が必要となります。
【関連情報】
《法令等》国税通則法15条
印紙税法3条
印紙税法別表第1通則5
印紙税法基本通達44条
【掲載日】
令和 8年 2月10日
上記掲載内容は、作成時の法令を基に作成しております。このため、個々の掲載内容が最新の法令等に基づいているかは、利用者ご自身がご確認ください。
出典:TKC税務研究所
