【税務Q&A】金融機関からの出向者に対する給与負担金と役員給与の損金不算入

【質問】

 A社は建設機械の製造業を営む7月決算の法人です。A社は取引先のB銀行から行員甲氏の出向を受け入れ、甲氏はA社の取締役に就任しました。
 A社はB銀行と出向受入れに関する契約を結び、次のとおり合意しています。
  ・甲氏の出向期間は2年間(X年10月~X2年9月)、給与負担金の額は年960万円(月額80万円)。
  ・甲氏の給与及び賞与はB銀行の規定により、B銀行が毎月甲氏に支給する。
  ・A社がB銀行へ支払う給与負担金については、各年3月末日及び9月末日に各480万円をB銀行の指定する口座に振込むこととする。
 なお、A社のX年9月に開催された株主総会において、甲氏の取締役就任について承認を得ており、甲氏の取締役報酬については取締役会に一任することになり、その直後の取締役会において、甲氏の取締役報酬960万円については承認を得ています。
 A社において毎月の役員報酬80万円を未払金として経理し、3月末日及び9月末日に各480万円をB銀行の指定する口座に振り込むこととした場合には、定期同額給与として損金の額に算入できますか。

【回答】

1 法令の規定
  法人税法上、役員給与のうち損金算入ができるものとして、定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与が挙げられています。
  定期同額給与とは、その支給時期が一月以下の一定の期間ごとである給与(「定期給与」)で、(1)当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの、及び(2)その他これに準ずるものとして政令で定める給与(改定役員給与等)とされています(法法34〔1〕一)。
  また、事前確定届出給与とは、その役員の職務につき、所定の時期に確定額を支給する定めに基づいて支給する給与(定期同額給与及び業績連動給与を除きます。)をいいます。
  そして、同族会社に該当しない法人が定期給与を支給しない役員に対して支給する給与を除き、事前確定届出給与については、所定の提出期限までに、納税地の所轄税務署長にその定めの内容に関して所定の事項(事前確定届出給与の支給時期及び各支給時期における支給金額等)を記載した届出を行う必要があります(法法34〔1〕二、法令69〔4〕)。
2 出向先法人が支出する給与負担金に係る役員給与の取扱い(法基通9-2-46)
  出向者が出向先法人において役員となっている場合において、次のいずれにも該当するときは、出向先法人が支出する当該役員に係る給与負担金の支出を出向先法人における当該役員に対する給与の支給として、(法人税)法第34条(役員給与の損金不算入)の規定が適用されます。
 (1)当該役員に係る給与負担金の額につき当該役員に対する給与として出向先法人の株主総会、社員総会又はこれに準ずるものの決議がされていること。
 (2)出向契約等において当該出向者に係る出向期間及び給与負担金の額があらかじめ定められていること。
(注)1 本文の取扱いを受ける給与負担金についての同条第1項第2号(事前確定届出給与)に規定する届出は、出向先法人がその納税地の所轄税務署長にその出向契約等に基づき支出する給与負担金に係る定めの内容について行うこととなる。
   2 出向先法人が給与負担金として支出した金額が出向元法人が当該出向者に支給する給与の額を超える場合のその超える部分の金額については、出向先法人にとって給与負担金としての性格はないことに留意する。
3 ご質問に対する回答
  ご質問の事例の場合には、給与負担金が上記2の(1)及び(2)に掲げる要件を満たすものとして、A社の支出する給与負担金の支出時期、支出金額を甲氏に対する役員給与の支給時期、支給金額として、法人税法第34条の要件にあてはめて、損金の額に算入できるか判断することになります。
  そして、法人税法第34条の定期同額給与とは「その支給時期が一月以下の一定の期間ごとである給与で当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものその他これに準ずるものとして政令で定める給与」とされています。
  したがいまして、A社がB銀行へ支払う給与負担金については、3月末日及び9月末日に各480万円を指定口座への振込により行うこととされていますので、そのタイミングでA社から甲氏に支給されたものとして、定期同額給与には該当しないことになります。
  ただし、定期同額給与には該当しないものの、上記通達(注)1にあるとおり、出向先法人であるA社がその納税地の所轄税務署長に所定の届出を行うことにより事前確定届出給与として、損金の額への算入が認められる場合があると考えます。
  なお、A社が同族会社に該当しない内国法人である場合、給与負担金の支出を毎月払いとしていない出向者に係る給与負担金を支出する場合には、この届出は不要となります(法法34〔一〕二イ括弧書き)。

【関連情報】
《法令等》
法人税法34条
法人税法施行令69条
法人税基本通達9-2-46

【収録日】
令和 6年11月25日
上記掲載内容は、作成時の法令を基に作成しております。このため、個々の掲載内容が最新の法令等に基づいているかは、利用者ご自身がご確認ください。

出典:TKC税務研究所


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