決算賞与は、社員への感謝を伝えると同時に、節税にもつながる制度です。
しかし、「支給が翌月になるけど、当期の経費にできる?」「通知を出していれば大丈夫?」といったご相談を多くいただきます。
本記事では、法人税法施行令第72条の3に基づき、決算賞与を当期の費用にできる3つの要件を、公認会計士・税理士の視点でわかりやすく解説します。
【質問】
当社は、3月決算法人ですが、当期は、業績が良いことから社員30名に対し決算賞与を臨時で支給することを取締役会において決定しました。
決算賞与の支給は4月に行いますが、3月末に賞与として損金経理をし、当期の費用にしたいと考えております。
当期末では未払いですが、税務上は当期の費用とすることができるのでしょうか。
【回答】
次の三要件が満たされていれば、3月末の賞与として費用とすることができます。
(1)支給金額の通知
(2)1か月以内の支払
(3)損金経理
【解説】
1 使用人賞与の費用(損金算入)時期について
内国法人がその使用人に対して賞与(給与のうち臨時的なもの)を支給する場合には、その賞与の額について、次の賞与の区分に応じ、その定める事業年度において支給されたものとして費用として取り扱うこととされています。(法令72の3)
(1)労働協約又は就業規則により定められる支給予定日が到来している賞与
⇨ その支給予定日又はその通知をした日のいずれか遅い日の属する事業年度で費用とする。
(2)次の三要件を満たす賞与
① その支給額を各人別に明確にし、かつ、同時期に支給を受けるすべての使用人に対して通知をしていること。
② ①の通知をした金額を、その通知をしたすべての使用人に対して、その通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払っていること。
③ その支給額につき、①の通知をした日の属する事業年度において損金経理をしていること。
⇨ 上記①〜③の三要件をすべて満たす場合には、使用人にその支給額の通知をした日の属する事業年度で費用とする。
(3)上記(1)及び(2)に掲げる賞与以外の賞与
⇨ その賞与が支払われた日の属する事業年度で費用とする。
2 今回の事例の場合
(1)今回の事例の場合は臨時の決算賞与ということですので、次の①〜③の要件を満たせば、上記1(2)に該当しますので3月末の費用とすることができます。
① 支給額を社員30名に対し3月末までに各人別に通知していること。
② 通知をした金額を、その通知をした社員30名に対し4月末日までに支払っていること。
③ 支給額を3月末までに賞与として損金経理していること。
(2)上記の1の(2)①〜③の要件を満たさない場合には、支給日に費用となります。
【ポイントまとめ】
・決算賞与を「当期の経費」として処理するには、通知・支払・損金経理の3要件がすべて必要です。
・どれか一つでも欠けると、翌期の費用扱いになります。
・特に「通知日」と「支払時期」に注意しましょう。
【最後に】
会計や税務は、会社の信頼を支える“裏方の力”です。
正しい処理を積み重ねてこそ、安心して次の挑戦ができます。
「きちんとやりたいけれど、判断が難しい」
そんなときは、どうぞお気軽に当事務所へご相談ください。
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奈須大貴公認会計士・税理士事務所