【税務Q&A】青色申告特別控除に係る更正の請求の可否

【質問】

 事業所得者である私は、開業時から青色申告承認を受けて所得税の確定申告書を提出し、同申告書には損益計算書及び貸借対照表を記載した青色申告決算書も添付していますが、作成している帳簿書類等が65万円の青色申告特別控除の適用対象となる要件を備えたものに該当するか否かの判断がつきかねていたこともあって、10万円の青色申告特別控除の適用を受けていました。
 事業も軌道に乗って来たので、本年分から決算事務等を税理士に委任することとした関係で過年分の帳簿書類等を確認してもらったところ、65万円の青色申告特別控除の適用対象となる要件を十分備えたものという見解をいただきましたので、過去の確定申告で適用している10万円の青色申告特別控除から65万円の青色申告特別控除に変更するため、更正の請求をしたいと考えていますが、認めてもらえますか。
 なお、税務署に提出している確定申告書には、65万円の青色申告特別控除の適用を受ける旨の記載等はしていません。

【回答】

 10万円の青色申告特別控除の適用を受けて確定申告書を提出しているあなたは、更正の請求を行うことで65万円の青色申告特別控除の適用を受けることはできないものと解されます。

【関連情報】

《法令等》

  • 所得税法143条
  • 所得税法148条
  • 所得税法149条
  • 所得税法施行規則56条
  • 所得税法施行規則57条
  • 所得税法施行規則58条
  • 所得税法施行規則59条
  • 所得税法施行規則60条
  • 所得税法施行規則61条
  • 所得税法施行規則62条
  • 所得税法施行規則63条
  • 所得税法施行規則64条
  • 所得税法施行規則65条
  • 租税特別措置法25条の2第1項
  • 租税特別措置法25条の2第3項
  • 租税特別措置法25条の2第5項
  • 租税特別措置法施行規則9条の6
  • 租税特別措置法通達25の2-4

【解説】

1 65万円の青色申告特別控除の適用要件は、〔1〕確定申告書にその適用を受ける旨及びその適用を受ける金額の計算に関する事項の記載、〔2〕正規の簿記の原則に従った帳簿書類に基づいて作成された貸借対照表及び損益計算書その他事業所得等の金額に関する明細書の添付、かつ、〔3〕当該確定申告書をその提出期限までの提出、を行った場合に限り適用することとされています(措法25条の2〔5〕)。
2 この点、10万円の青色申告特別控除は、確定申告への記載を要件とするものではありませんので、同10万円控除の適用を受けることができる者がその控除をしないところで確定申告書を提出している場合であっても、修正申告又は更正等によりその控除を受けることができることになります。つまり10万円の青色申告特別控除は、青色申告の要件を満たす帳簿書類に基づいて作成された申告書の提出者であれば適用される控除ということになります。
3 そうしますと、上記1及び2のとおり、10万円又は65万円の青色申告特別控除の適用要件は明らかに異なるものですが、上記1の65万円の青色申告特別控除については、その適用を受けることを失念していた場合において、後に納税者のやむを得ない事情があったとして税務署長がこれを認め、同控除の適用を認めるとするいわゆる宥恕規定は設けられていません。
  このことは、正規の簿記の原則に従った帳簿書類に基づいて作成された貸借対照表及び損益計算書その他事業所得等の金額に関する明細書の添付ができるような納税者が、10万円又は65万円の選択を誤るということを予め想定して宥恕規定を設ける必要性もないということを前提に租税特別措置法第25条の2が規定されているのではないかと考えられるところです。
  加えて、租税特別措置法通達25の2-4には、「65万円の青色申告特別控除は、確定申告書に記載されている不動産所得の金額又は事業所得の金額が、修正申告又は更正(再更正を含む。)により異動することとなったため『当該確定申告書に記載されている青色申告特別控除額』にも異動が生ずることとなった場合には、その異動後の控除額によりこれらの所得の金額を計算することに留意する。」と規定しており、当初申告において65万円の青色申告特別控除の適用を受けていることを前提とした規定ぶりとなっています。
4 以上のことから、仮に、ご質問の不動産賃貸が事業的規模の貸付けとして認められる場合であっても、過去の確定申告で上記1の〔1〕~〔3〕までの要件を満たした確定申告書の提出を行っていない以上、10万円の青色申告特別控除の適用対象者とされることになり、その限りでは課税標準を誤った申告とはなりませんので、この確定申告について更正の請求で65万円の青色申告特別控除の適用を受けることはできないのではないかと考えられます。

【収録日】

平成30年 6月27日
上記掲載内容は、作成時の法令を基に作成しております。このため、個々の掲載内容が最新の法令等に基づいているかは、利用者ご自身がご確認ください。

出典:TKC税務研究所


投稿日

カテゴリー:

, , ,

投稿者:

タグ:

2025年12月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031