【質問】
事業所得の申告をしている甲は、所得税の税務調査を受けたところ、重加算税の対象となるような売上除外の事実が明らかになりました。甲は、後日、修正申告書を提出する予定ですが、調査の終結まで数週間がかかるとのことです。このため、調査担当者に納税について相談したところ、税金をあらかじめ予納することができるとの話がありました。この税金の予納とはどういうものでしょうか。
【回答】
1 法令等について
所得税は、申告納税方式の国税であり、原則として納付すべき税額が確定申告等により確定します。したがって、暦年の終了により納税義務が成立していたとしても、申告による税額確定前にされた納付は、法律の規定に基づかないものとして、原則として誤納金として還付又は充当の対象となります。
これに対して、国税通則法(以下「通則法」といいます。)59条1項2号は、最近において納付すべき税額の確定することが確実であると認められる国税として納付する旨を税務署長に申し出て納付した金額があるときは、その還付を請求することができないと規定しています。
これは、予納制度といわれ、この予納とは調査等により近日中(おおむね6か月以内)に納付すべき税額の確定が見込まれる場合、修正申告書等を提出する前であっても、その納付すべき税額の見込金額を、税務署長に申し出て、あらかじめ納付(予納)することができる制度とされています(国税庁パンフレット「予納制度を利用した納税のご案内」)。上記規定における「最近」とは、おおむね6月以内をいうものとされていますが、期限内申告書において納付すべき税額の確定することが確実であると認められる場合は、おおむね12月以内をいうものとされています(通則法基通59条関係1)。
そして、国税の予納をした場合において、その国税に延滞税又は利子税が課されるときは、その延滞税又は利子税の計算の終期は、予納をした日とすることとされています(通則法基通59条関係4)。したがって、予納をすると延滞税の計算は納付された日までとなりますので、修正申告書を提出した日に納付する場合と比べて延滞税の額が少なくなる場合があります。
2 予納の方法等
予納の方法は、「国税の予納申出書」に税目、年分、納期限、税額、予納する理由、申告書等提出予定日等を記入して、税額の確定手続(修正申告書の提出等)の前までに、所轄の税務署長あてに提出し、予納する金額を納付することとなります。
なお、予納があった場合において、その納付に係る国税の全部又は一部について、その納付の必要がないこととなったときは、その時に国税に係る過誤納があったものとみなされ、還付等が行われることとされています(通則法59〔2〕)。ご質問の事例において過誤納のあったとみなされる日は、修正申告が行われた日又は修正申告が行われないことが明らかになった日となります(通則法基通59条関係2)。さらに、予納の目的となった通則法59条1項2号に規定する国税が、その申出に係る国税の確定予定日を経過しても確定しないときは、税務署長等において、その確定が確実であると認められるものを除き、その確定予定日を経過した日に過誤納があったものとして取り扱うこととされています(通則法基通59条関係3)。
【関連情報】
《法令等》
- 国税通則法59条
- 国税通則法基本通達59条関係1
- 国税通則法基本通達59条関係2
- 国税通則法基本通達59条関係3
- 国税通則法基本通達59条関係4
【収録日】
令和 7年 5月15日
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出典:TKC税務研究所
