【質問】
2月決算法人のA社では、令和X年8月31日及び令和X年12月31日支給の事前確定届出給与について、令和X年4月25日開催の株主総会の決議を経て期限内に届出書を提出したところ、このたび事業年度を9月決算に変更することとなり、変更後の新事業年度(令和X年10月1日から令和X1年9月30日)については、令和X年11月25日に株主総会を開き、事前確定届出給与の支給時期、支給額を決議して届け出る予定です。
この場合、事前確定届出給与の支給対象となる職務執行期間の一部が重なることとなりますが、令和X年4月25日の総会決議に係る事前確定届出給与を損金算入することに問題はないでしょうか。また、令和X年12月31日支給分は、その重複期間内の支給となりますが、令和X年11月25日開催の株主総会の決議を受けた新事業年度の「事前確定届出給与に関する届出書」の記載方法についても、併せてご教示ください。
【回答】
1 役員給与のうち損金算入ができるものの一つとして挙げられている事前確定届出給与とは、その役員の職務につき、所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与(定期同額給与及び業績連動給与を除きます。)をいいます。
そして、同族会社に該当しない法人が定期給与を支給しない役員に対して支給する給与を除き、事前確定届出給与については、所定の提出期限(原則として、株主総会の支給決議の日から1月経過日)までに、納税地の所轄税務署長にその定めの内容に関して所定の事項(事前確定届出給与の支給時期及び各支給時期における支給金額等)を記載した届出を行う必要があります(法法34〔1〕二)。
また、既に届出をしている法人が当該直前届出に係る定めの内容を変更する場合において、その変更が臨時改定事由又は業績悪化改定事由(支給額を減額させる場合に限ります。)による場合には、変更後の事前確定届出給与の定めの内容に関する届出書を、所定の変更届出期限(事由発生日等から1月経過日)までに提出することとされています(法令69〔5〕)。
この事前確定届出給与を含む役員給与は、定時株主総会から次の定時株主総会までの職務執行期間に係る職務執行の対価と考えられるところ、事前確定届出給与の届出を行った後に決算期が変更された場合には、お尋ねのA社のように、その支給対象となる職務執行期間の一部が変更後の翌事業年度に係る職務執行期間と重なる場合等も生じるものと思われますが、上記の事前確定届出給与に係る法人税法の規定においては、届出を行った後に決算期が変更された場合について特段の取扱いは設けられていませんので、そのような場合においても、先に行った事前確定届出給与に関する届出は、決算期変更後も有効と考えられます(逆に、一旦、届け出た事前確定届出給与の変更届出期限による変更は、臨時改定事由か業績悪化改訂事由に起因する場合のみ認められる規定となっています(法令69〔5〕)。)。
したがって、お尋ねのA社が令和X年4月25日開催の株主総会の決議を受けて提出した届出に基づき、届出どおり令和X年8月31日及び令和X年12月31日に届出額を支給する事前確定届出給与については、損金算入が可能と思われます。
2 次に、決算期変更後の新事業年度(令和X年10月1日から令和X1年9月30日)において、令和X年11月25日に株主総会を開き、事前確定届出給与の支給時期、支給額を決議して届け出る場合には、新たな職務執行期間は令和X年11月25日から翌期の定時株主総会の開催日までとなることから、決算期変更前に届け出た令和X年12月31日の支給は、新たな職務執行期間に含まれることとなります。
その場合の令和X年11月25日の株主総会決議を受けた「事前確定届出給与に関する届出書」の記載方法については、付表1(事前確定届出給与等の状況(金銭交付用))の記載要領等の3(3)では、「「事前確定届出給与に関する事項」の「支給時期(年月日)」欄及び「支給額(円)」欄には、次に掲げる事前確定届出給与の区分ごとに次の支給時期及び支給額を記載してください。」とされ、(支給済分)と(支給予定分)に区分されています。
このうち、(支給済分)の区分では、『「職務執行期間開始の日の属する会計期間」において、前回以前の届出に係る「所定の時期に確定した額の金銭等を交付する旨の定め」に基づいて支給することとしていた事前確定届出給与』について、〔1〕「届出額」欄に「前回以前の届出において届け出た事前確定届出給与の支給時期及び支給額」、〔2〕「支給額」欄に「〔1〕の事前確定届出給与の実際の支給時期及び支給額」を記載することとされています。
また、(支給予定分)の区分では、『「職務執行期間開始の日の属する会計期間」及び「翌会計期間以後」において、この届出に係る「所定の時期に確定した額の金銭等を交付する旨の定め」に基づいて支給することとしている事前確定届出給与』について、「今回の届出額」欄に「この届出において届け出る事前確定届出給与について、届出の時において予定されている支給時期及び支給額」を記載することとされております。
3 したがって、お尋ねの事例においては、決算期変更後の令和X年11月25日の総会決議を受けた「事前確定届出給与に関する届出書」の付表1において、令和X年4月25日開催の総会決議を受けて提出した前回の届出書記載の令和X年12月31日の支給分は、『「職務執行期間開始の日の属する会計期間」において、前回以前の届出に係る「所定の時期に確定した額の金銭等を交付する旨の定め」に基づいて支給することとしていた事前確定届出給与』として、届出時に未だ支給されていない場合は「届出額」欄のみに記載し、令和X年11月25日の株主総会で新たに事前確定届出給与の支給を決議された場合には、『「職務執行期間開始の日の属する会計期間」及び「翌会計期間以後」において、この届出に係る「所定の時期に確定した額の金銭等を交付する旨の定め」に基づいて支給することとしている事前確定届出給与』として、「今回の届出額」欄に記載することとなります。
【関連情報】
《法令等》
法人税法34条
法人税法施行令69条
【収録日】
令和 6年 9月19日
出典:TKC税務研究所