【質問】
A社では、使用人兼務役員に対して年2回、使用人の賞与と同じ7月と12月の支給時期に役員分と使用人分の賞与を合わせて支給する予定です。この使用人兼務役員に対する賞与のうち使用人分の賞与は、他の使用人の賞与と同様、使用人としての職務に対する月額給料の1カ月分としています。また、その他の取締役の中には、定期同額給与のみで、事前確定届出給与の支給がない者もいます。
ところで、事前確定届出給与に関する届出書の「付表1」では、「事前確定届出給与以外の給与に関する事項」も記載することとされていますが、これらの役員に係る給与については、どのように記載すればよいでしょうか。
【回答】
1 「事前確定届出給与に関する届出書」は、法人が、役員の職務につき「所定の時期に確定した額の金銭等を交付する旨の定め」に基づいて支給する同法第34条第1項第2号に掲げる「事前確定届出給与」に関する届出を、その法人が必要事項を記載して納税地の所轄税務署長へ提出する場合に、その「定め」において定めた「事前確定届出給与対象者(事前確定届出給与の支給の対象となる者をいいます(法規22の3〔2〕二)。)」全ての分を取りまとめて作成することとされています。
記載内容は、事前確定届出給与に係る株主総会等の決議をした日及びその決議をした機関等、事前確定届出給与に係る職務の執行を開始する日、臨時改定事由の概要及びその臨時改定事由が生じた日等のほか、具体的な事前確定届出給与等の状況については、「〔4〕 事前確定届出給与等の状況」欄に付表の番号(No.*~No.*)のみを記載し、具体的な支給状況等は、「付表1(事前確定届出給与等の状況(金銭交付用))(以下、「付表1」といいます。)」に個々の事前確定届出給与対象者ごとに記載することとされています。
2 付表1では、その記載対象となる事前確定届出給与対象者の氏名、役職等を記載した上で、「事前確定届出給与に関する事項」として、事前確定届出給与の区分(前回以前の届出に係る支給済分と今回の届出に係る支給予定分の区分です。)ごとの支給時期及び支給額のほか、「事前確定届出給与以外の給与に関する事項」として、事前確定届出給与対象者に対して支給した、又は支給しようとする事前確定届出給与以外の給与について、届出の時において予定されている支給時期及び支給額を記載することとされています。
このように、まず、付表1の作成・添付が必要となる役員は、事前確定届出給与対象者、すなわち、事前確定届出給与の支給の対象となる者のみとなりますので、お尋ねのA社の役員のうち、定期同額給与のみで、事前確定届出給与の支給がない者は、この「付表1」を作成する必要はないこととなります。
3 次に、お尋ねの「事前確定届出給与以外の給与に関する事項」の具体的な記載内容は、財務省令に規定されており、「事前確定届出給与に係る職務を執行する期間内の日の属する会計期間において事前確定届出給与対象者に対して事前確定届出給与と事前確定届出給与以外の給与(法第34条第1項に規定する役員に対して支給する給与をいい、令第69条第3項各号に掲げる給与を除く。)とを支給する場合における当該事前確定届出給与以外の給与の支給時期及び各支給時期における支給額」を記載することとされています(法規22の3〔2〕八)。
ところで、法人が「役員に対して支給する給与」については、一定の要件を満たす定期同額給与、事前確定届出給与又は業績連動給与のいずれにも該当しないものの額は損金の額に算入されません(法法34〔1〕)が、使用人兼務役員の使用人としての職務に対する給与は、この役員給与に係る損金不算入規定の対象となる「役員に対して支給する給与」から除かれています(法法34〔1〕かっこ書)ので、使用人兼務役員に対する賞与のうち使用人部分は、同項二号の事前確定届出給与には該当しません(なお、使用人兼務役員に対する使用人分給与については、他の使用人に対する賞与の支給時期と異なる時期に支給した使用人分賞与は損金不算入とされるほか、役員分の給与と合わせて実質又は形式基準により算定される不相当に高額な部分の金額は、損金不算入とされます(法法34〔2〕、法令70)。)。
そして、「事前確定届出給与以外の給与に関する事項」欄への記載は、使用人兼務役員に対して事前確定届出給与を支給する場合には、当該役員も事前確定届出給与対象者に該当し、記載が必要となりますが、記載対象となる給与は、「法第34条第1項に規定する役員に対して支給する給与」とされ、上記のとおり、使用人兼務役員の使用人としての職務に対する給与は、かっこ書でこれから除かれていますので、記載は不要となります。
したがって、事前確定届出給与を支給する使用人兼務役員については、役員分の定期同額給与等のみを記載し、使用人分の賞与や給与については、記載する必要はありません。
なお、付表1の記載要領等の「(4)「事前確定届出給与以外の給与に関する事項」の(注)では、「この事前確定届出給与以外の給与には、次の給与を含みません。」として、「〔2〕 使用人としての職務を有する役員に対して支給するその使用人分給与」が挙げられています。
【関連情報】
《法令等》
法人税法34条
法人税法施行令70条
法人税法施行規則22条の3
【収録日】
令和 6年11月25日
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出典:TKC税務研究所
