【質問】
得意先等との飲食費の取扱いについては、令和6年度改正で、交際費等とならない一人10,000円以下(改正前5,000円以下)の飲食費(以下「少額飲食費」といいます。)の金額基準の引上げが行なわれましたが、同じ飲食費でありながら交際費等とされる接待飲食費との相違点をよく理解できていないところがあります。基本的なことですが、これらの実務における注意点について教えて下さい。
【回答】
1 交際費等の損金不算入制度について
法人が平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度において支出する交際費等の額は、原則、その全額が損金不算入とされますが、交際費等の額のうち、接待飲食費(社内飲食費を除きます。以下同じ。)については、その50パーセント相当額の損金算入が認められ、50パーセント相当額を超える部分の金額は、その事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しないとするものです(措法61の4〔1〕)。
ただし、この接待飲食費の50パーセント相当額の損金算入の取扱いは、令和2年度改正において資本金の額等が100億円を超える場合には令和2年4月1日以後に開始する事業年度から適用されないことになりました(措法61の4〔1〕、令2改正法附則78)。
上記のほか、資本金の額等が1億円以下である法人(投資法人、特定目的会社及び大法人の子会社を除きます。)については、「定額控除限度額(支出する交際費等の額の年800万円以下の部分の金額)」と「接待飲食費の50パーセント相当額の金額」とのいずれかの金額を損金の額に算入することができる特例措置が設けられています(措法61の4〔2〕)。
そして、同じ交際費等の損金不算入の規定において、少額飲食費(社内飲食費を除きます。以下同じ。)を「交際費等」の範囲から除くこととしています(措法61の4〔6〕二、措令37の5〔1〕)。
この少額飲食費について、令和6年度改正において一人当たりの金額を5,000円以下から10,000円以下に金額を引き上げる改正が行なわれています(措令37の5〔1〕)。この改正は令和6年4月1日以後に支出する少額飲食費について適用されます(令6改正措令附則16)。なお、この場合の支出があったときとは、飲食等の行為があったときをいいます(措通61(1)-24(2))。
2 少額飲食費と接待飲食費について
一人5,000円以下の飲食費(少額飲食費)の損金算入制度は平成18年度改正に導入されています。また、接待飲食費の額の50パーセント相当額の損金算入制度は平成26年度改正において導入されています。大きな違いは少額飲食費は交際費等には含まれず損金算入ができますが、接待飲食費は交際費等に含まれますので、損金不算入の限度計算の対象となります。
少額飲食費と接待飲食費は、どちらもいわゆる社内飲食費(専ら法人の役員、従業員、又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものをいう。)を除く(措法61の4〔6〕)こととされているほか、次の事項を記載(接待飲食費は(3)を除く)した帳簿書類の保存が求められています(措規21の18の4)。なお、令和6年度改正において少額飲食費の金額基準が一人10,000円以下とされましたが、その適用対象となるのは令和6年4月1日以後に開始する事業年度ではなく、令和6年4月1日以後に支出するものからとされています(令6改正措令附則16)。
また、資本金の額等が100億円を超える場合、接待飲食費の額の50パーセント相当額の損金算入制度は適用対象外とされますが、少額飲食費の損金算入の取扱いは適用対象となります。
(1)飲食等のあった年月日
(2)参加した得意先等の事業関係者の氏名・名称及びその関係
(3)飲食等に参加者した人数
(4)飲食等に要した金額
(5)飲食店等の名称、所在地
(6)その他飲食費であることを明らかにする事項
3 実務において注意すべき点
実務において注意すべき点としては、次のようなことが考えられます。なお、少額飲食費には金額基準がありますが、金額基準以外については接待飲食費も同様の取扱いになります。
(1)飲食費に係る消費税等の取扱いについては、法人が採用している経理処理により判断することになるので、税込経理方式を採用している場合は飲食費の額に含まれ、税抜経理方式を採用している場合は飲食費の額に含まれない。なお、控除対象外消費税の額のうち飲食費に係る金額は飲食費の額に含まれる(平元消費税経理通達12(注)3)。
(2)上記2の書類保存要件にある「参加した得意先等の事業関係者の氏名・名称及びその関係」は社内飲食費ではないことを明らかにするものであり、飲食等を行った相手方を「〇〇会社・□□部・△△◇◇(氏名)、卸売先」と記載するが、相手方が多数参加した場合の名前は「△△◇◇(氏名)部長他10名」の記載でよいとされている。
(3)資本関係が100パーセントの親会社の役員等であっても、相手方としては社外の者に該当するので、社内飲食費に当たらない。
(4)1次会、2次会など連続した飲食等でも、それぞれの行為が単独で行われている場合(全く別の業態の飲食店等を利用しているなど)は、それぞれの行為に係る飲食費ごとに判定して良い。
(5)対象となる飲食費は「飲食その他これに類する行為」(措法61の4〔6〕)とされているので、テーブルチャージ料やサービス料等のほか、飲食後にその飲食店で提供される「お土産代」は含まれるが、得意先等との飲食を行う飲食店等への送迎するための送迎費(タクシー代等)については、飲食のために飲食店等に直接支払うものではないので、送迎費自体は交際費等とされる。
(6)少額飲食費で一人10,000円(改正前5,000円)を超えた場合、超えた部分だけなくすべてが交際費等に該当する。
実際の検討に当たっては、今までに国税庁がホームページで公表されている「平成18年5月国税庁『交際費等(飲食費)に関するQ&A』」や「接待飲食費に関するFAQ(平成26年7月)」を参考にしたらよろしいかと思います。この場合、上記Q&A等の公表以降、これらの掲載内容について改正等が行なわれている場合には、その点を考慮する必要がありますので、ご注意ください。
【関連情報】
《法令等》
租税特別措置法61条の4
租税特別措置法施行令37条の5
租税特別措置法施行規則21条の18の4
租税特別措置法令和2年改正法附則78条
租税特別措置法施行令令和6年改正措令附則16条
【収録日】
令和 6年 5月21日
出典:TKC税務研究所